今年3月、製作技術が四日市市の無形文化財に指定された伝統工芸品「日永うちわ」。その唯一の作り手として工芸技術保持者の認定を受けた株式会社稲藤(同市日永)の稲垣和美さん(56)は、伝統の技術を守りながら革新への挑戦を続けている。【日永うちわを作る稲垣さん=四日市市日永で】

 東海道と伊勢街道の分岐点に位置する日永地区は、江戸時代には茶屋や旅籠が軒を連ね、土産品としてうちわが盛んに売られていた。最盛期の明治初期には製造元が十数軒あったが、今では同社のみに。それでも伝統の灯を守るため、伊勢市のおかげ横丁など県内の観光地で販売・実演し、県外のイベント会場でも販売している。

 一本の細い竹を細かく割いて交互に編み、骨組みを作る。日永うちわは持ち手の柄が丸いのが特徴で、弓のようにしなるように仕上げるには高い技術が必要とされる。稲垣さんは先代の義父の姿を見て、「この技術を絶やすことなく未来へつなげていきたい」と思うようになったという。
 時には、亡くなった家族が着ていた思い出の着物の生地をうちわに貼り、形見分けにしたいという依頼など、家族をつなぐ“世界で一つだけのうちわ”を作ることも。思いが込もっているからこそ、伝統の技術を生かし、手間も惜しまない。

 昔から作られている松阪木綿や友禅和紙を使ったうちわの他、アロマオイルを含ませた香り玉を仕込んだ「香るうちわ」など、伝統に縛られない新しい試みにも積極的な稲垣さんは「大量生産のうちわでは感じられない優しい風を、手作りの日永うちわで感じてほしい」と語った。

 問い合わせは同社TEL059・345・1710まで。