美容業界から転身し、専業農家としてキュウリの栽培に携わって2年目、四日市市上海老町の阿部俊樹さん(37)は、「生産者と消費者の壁を壊したい」という思いを胸に、新しい農業の形を実践している。【キュウリを収穫する阿部さん=四日市市上海老町で】

 以前はエステサロンを経営し、女性の美を追求してきたが、「内側からの美しさ」を考えた時、食への思いが強くなった。「食べるものを一から育てたい」。それまで意識していなかった農業について深めようと、農業フェアへ足を運び、JAや行政の担当者と交流を深めるなどして情報収集に努めた。

 キュウリを選んだのは「地元で専門的にやっている人がいなかった」から。仕事の傍ら、休日は岐阜県の農家へ赴き、ノウハウを学んだ。当時住んでいた名古屋市から実家へ戻り、両親の所有する土地を活用して「しなやかファーム」と屋号を掲げ、農業人生をスタートさせた。現在は5棟(計約1100平方メートル)のハウスで栽培している。

 「顔が見える農家でいたい」と、ツイッターやフェイスブックで苗植えや収穫などの様子を発信。時には収穫が夜通しになることもあるが、「やれば何とかなる」。最初は枝切りの失敗や病気の見落としなど後悔も多かったが、「初心者で、基準を知らなかったから」と割り切り、さまざまな状況を打破していこうという熱い気持ちを忘れない。 

 初回の収穫時から、会場にDJブースやステージを設け、来場者に自身が栽培したキュウリを振る舞う収穫祭「しなやかフェス」を開催。会場に来ることができない人も資金援助や食材を無償提供してくれるという。

 10月上旬にもSNSでつながる仲間など全国から約180人が集まった。「担い手不足という課題があるなら、その状況を変えていかないと」と、知人が経営するアパレル会社と協力し、「お洒落な作業着を作り、農家ってかっこいいと思わせたい」という構想も練っているという。

 「我が子のように育てたキュウリを食べて頂き、目の前で『おいしい』と言って頂けると本当にうれしい。生産者と消費者の壁を壊すきっかけを作ることができる、世界で一番影響力のある農家になりたい」と熱く語った。