冬の訪れが近づくなか、人形店にはもう新作のひな人形が並び始めた。形態や色合いなど、時代とともにニーズは多様化し、さまざまな商品やサービスが登場している。創業から約40年、「人形の勢玉」(四日市市川原町)の谷捷平社長(74)は「人形は手作りの工芸品。日本の節句文化にとって大切な存在です」と語る。【ひな人形の七段飾りと谷社長=四日市市川原町で】

 戸建てばかりでなく、マンション住まいの人も増え、以前ほど段飾りの需要は多くなく、より明るい色のものが好まれるという。「ハロウィーンやクリスマスのような派手さはないが、世代を越えてだんらんが続く節句文化を大事にしたい」と谷社長は人形を見つめながら話した。

 人形の専門店である同社では、頭、胴、衣装から着付けまで細部にわたり、職人の技が生きたひな人形がそろい、加えて知識の豊富さも強み。「来店してみて、ひな人形の魅力や節句文化について考える機会になった」という人もいたという。

 販売だけでなく、修理や、実際の着物をリメイクした衣装を使った人形制作の依頼も有料で受けている。「本当の着物で作られた人形は一味違った趣がある」。思いのこもった着物が次世代へ受け継がれ、人形が伝統文化を引き継ぐ役割を果たしている。

 また、「持ち主の思いが込められた人形には、最後まで感謝の気持ちを込めたい」と、不用になった人形の引き取りも受け付けている。引き取った人形は円楽寺(同市日永)で年2回供養される。