萬古焼は伊万里焼と並ぶ色彩豊かな美術工芸品だった――。そんな一面が想像できる江戸時代の絵本を、四日市市立博物館(同市安島)の学芸員が数年をかけて翻刻した。大量生産の土鍋や急須で知られる萬古焼だが、江戸で大成功したブランド力のある焼き物だったことが分かる、貴重な資料が誕生した。【翻刻した図録を手にする廣瀬さん=四日市市安島で】

 基になる「書雑春錦手」(かきまぜてはるのにしきで)(1788年)は、当時流行していた「黄表紙」と言われる大人向けの本で、萬古や南京などの焼き物が擬人化して描かれている。萬古焼の創始者・沼波弄山は江戸に窯を構え、没して11年後にこの本が出版されていることから、江戸で広く受け入れられていたことがうかがえる。

 4年前に国立国会図書館のデジタルコレクションで公開され、かねてからその存在を把握していた同博物館の学芸員、廣瀬毅さん(53)が1年ほどかけて読み、仮名文字に漢字を当てた。更に数か月かけて解説を加え、今年7月に「大江戸やき物語 翻刻 書雑春錦手」として完成した。

 物語は吉原を舞台に、擬人化された伊万里焼と南京焼が遊女の見受けを巡って争い、仲裁に入った楽焼が坊主の格好をした萬古焼に助けを求める内容。伊万里も南京も「錦手」と言われる華やかな焼き物で、高級品として知られる。廣瀬さんは「萬古焼は江戸の焼き物とされ、錦手の3番目に位置付けられていたのでは」と考えているそうだ。

 翻刻本は600円で、同博物館1階のミュージアムショップで販売している。

 問い合わせは同博物館TEL059・355・2700へ。