懐かしくも新鮮な古都の姿一堂に、パラミタミュージアムで「京の百景」

205

【「祇園祭」(右)は、準備期間からの観察から生まれた作品=三重県菰野町大羽根園松ケ枝町】

 三重県菰野町のパラミタミュージアムで10月4日、「岡田文化財団設立45周年記念 京の百景 描かれた京都の四季」が始まった。京都府全域の名所などを京都画壇の作家が1人1点で描いた118点を展示している。すべての作品をそろって見られる機会は限られているという。11月24日まで(会期中無休)。

 京都府を「洛心」「洛西」「洛北」「洛東」「洛南」「南山城」「丹波」「丹後」の8地区に分け、綿密な準備に基づいてなのか、ほとんど描かれた場所が偏らず、京の風景のすべてがそろっている。金閣寺や平安神宮、祇園祭の様子など、会場を歩くうちに、見覚えのある風景に幾つも出会える。

京都府全域の風景などが描かれた作品

 もとは、京都府が自然、風景、史跡、風俗、行事など、古都の美しい佇まいを後世に伝えようと、1971年度~1972年度にかけて、作家に制作を依頼したものだという。上村松篁、宇田荻邨、秋野不矩、小野竹喬、堂本印象など京都画壇を代表する作家たちがそれぞれの視点で描いており、幾つかの作品には作家のコメントが添えられている。

 宇田荻邨「嵐山」は、緑の中にのぞく紅が新鮮。「山は奥が深く野鳥の住む場所として、大切にいつまでも緑と野鳥を保護してほしいものだ」と書いている。谷野圭一「祇園祭」は、祭りの準備期間から付き合って描いた作品で、「私はこの祭り全体を支えている、長い歴史を刻んだ無形の骨格を見ることになった」と書いた。

緑からのぞく紅が新鮮な「嵐山」

 西内利夫「冠島(おおみずなぎどり)」は、無人島に渡って観察のなかから生まれた作品。鳥の愛情表現にほっとしたり、時にその鳴き声に恐怖を感じたりする。「原生林の木の間からのぞいた鮮紅の月が印象的であった」と書かれており、鑑賞のヒントにもなっている。

鳥の表情、紅い月が印象的な「冠島(おおみずなぎどり)」

 会期中、10月27日午後2時から、特別協力の京都文化博物館の主任学芸員植田彩芳子さんが作品解説「京の百景作品について」をする。11月3日午後2時からは、森川圭子さん(ソプラノ)と和田暁帆さん(ピアノ)のコンサート「音楽は時空を超えて」がある。

 パラミタミュージアムの入場料は一般1000円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料。