この夏、神奈川県発祥の食品スーパー「ロピア」が四日市市に初出店する。場所はイオンモールや業務スーパーなどがある富州原町の一角で、周辺には既存のスーパーも多く、競合ひしめく地域だ。「高品質・低価格」を掲げ、売り場責任者に裁量を与える独自の販売スタイルで、地元住民や流通業界に新たな波紋を呼ぶ。
ロピアの求人情報サイトに今年4月、「四日市北店(仮称)」のオープニングスタッフの募集が掲載された。同社は開店1週間前までは情報解禁しない方針のため、公式発表はまだないが、地元では説明会も開かれており、出店は既成事実となっている。
〇県内1号店の桑名でも評判呼ぶ
ロピアは2031年度までにグループ売上で2兆円を目指し、年10店舗ペースでの出店を進めている。県内1号店は昨年2月に開店した「桑名サンシティ店」(桑名市星川)だ。
桑名店では、ロピアの強みがすでに地域に浸透している。月2回は通うという菰野町の60代男性は「肉の品質がいい」と語る。市内の主婦も「開店当初より値段は上がったが、肉の品質がいいから通う」と評価する。4人の子どもを育てている30代女性は「火曜はほかの店も安いけど、同じくらいの値段で質がいい」と話した。

〇売り場責任者に価格決めなどの権限
ロピアは、BBQやグランピングが盛んな三重県に合わせて、精肉売り場を強化している。さらに、各売り場は独立店舗のような運営をし、店長ではなく売り場責任者に仕入れや価格設定の権限を持たせて地域ニーズに応えようとしている。SNS映えする総菜も、若年層を中心に話題を集めている。
店内には、野菜や総菜などの大容量パック商品が並ぶ。この販売手法や豪快な売り場の演出から、「日本版コストコ」とも呼ばれている。実際、富州原町に住むコストコ会員の女性は「ロピアが来るなら、もう会員更新はしない」と話している。一方で、「コストコの方が好き」「量が多すぎて高齢者には不向き」との声もある。
決済は現金が基本で、キャッシュレスは自社アプリに限定することでコストを削減し、低価格を実現している。こうしたビジネスモデルにより、年率30%という驚異的な成長を続けている。
〇既存店との競合、共存はいかに
富洲原町の出店場所は、かつてパチンコ店だった建物を「居抜き」で再活用する。初期投資を抑え、出店スピードを加速する戦略だ。周辺にはスーパーサンシ、F☆MART、ラ・ムー、カネスエといった競合スーパーが店を構え、「ロピアの開店で影響は避けられない」と同業者も語る。


近鉄富田駅近くの佃煮店「ヤマゼン野呂南店」の黒田佐智子さんも「1月にカネスエができた時、お客が近鉄富田方駅方面に流れた。ロピアの出店は正直不安ができるのは不安」と語る。
スーパー業界の関係者はこう語る。「新しい店ができれば、誰もが一度は行ってみようとなる。ただ、どの店にも特色があり、客層も違う。やがて落ち着けば、地元の店に戻る人もいる。ロピアも初年度は資金を投下するだろうが、勝負は2年目からだと思っている」