石油精製・石油化学工場などの産業機械や工場設備のメンテナンス業からものづくりの業界へ、創意工夫とチャレンジ精神で踏み出しているのが四日市市三ツ谷町の伊藤工機(寺村輝行代表取締役社長)だ。大手コンビニチェーンのベンダー(商品納入業者)が製造する「パラパラ感のある炒飯」の大型IH調理機はヒット商品のひとつで、国内外の工場などに約400台を納入している。
同市近郊のコンビナートなどの機械設備のメンテナンスを担う会社として1951年に創業した。30年ほど前、以前取引のあった大手コンビニチェーンのベンダーから相談を受けた。ベンダーの取引先の大手コンビニチェーンから「パラパラ感のある手作り風炒飯を製造する機械ができないか」と相談されたという。
〇鍋を振らずに「あおり」を出す
機器製造の経験はあったが、「パラパラ感のある手作り風炒飯を製造する機械」と言われても、知見も経験も全くなかった。しかし、「伊藤工機なら」という期待に応えようと、フライパンを振りながら「どうすればいいか」と社内で試行錯誤を重ねてきた。
炒飯を作る際に重要な「強い火力」と「あおり」をいかに機械で再現するかが難題だったが、「発想の転換」で実現させた。IHによる高温調理と鍋を振るのではなく、専用撹拌羽根を開発して米や具材を「あおる」ことで「パラパラ感」を出すことに成功した。これは特許技術になった。

食品製造機器の業界で実績のなかった同社の機械で調理された炒飯が、大手コンビニチェーンのトップに「これだ」と言わせた。現在はタイ、シンガポール、マレーシア、台湾など東南アジアのほか、ヨーロッパ、北米でも導入されている。
〇考察がスキルアップに
企画打ち合わせから設計、製作、組み立て、据え付け、アフターフォローまで、一連の業務のすべてに担当者が携わり、取引先の要望に応えている。また、メンテナンスの仕事は産業機械や工場設備の「声なき声」を聞いて理解するスペシャリストとし臨み、取引先との関係を築いている。
寺村社長は日頃から、問題意識を持つことの大切さやチャレンジ精神について社員に語っている。さまざまな機械を見て動きや構造などを観察し、自分の考えや思いとの違い、なぜこんな工夫がされているのか、などを考察することでスキルアップを図るよう指導している。机上での議論や検討も重要だが、「やってみなければ分からない、チャレンジしてみる」ことも大切にする姿勢だ。
取引先からの要望はさまざまで、寺村社長は「業界、分野を問わず、思わぬお話を頂くこともある。これからもお客さまの満足と笑顔を求め、創意工夫で挑み続けたい」と話している。