休日の部活動は地域で 種目ごとに進行中 四日市の市立中学

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【羽津中学校でのハンドボール拠点型の練習の様子】

 市立中学校の休日の部活動を地域へ展開する準備が四日市市でも進んでいる。将来に渡って中学生が継続的にスポーツ・文化芸術活動に親しむ機会を確保・充実するのが主な目的で、来年12月をめどに完全移行する予定だ。地域で指導する人材をどう確保するか、子どもたちの部活動に対する気持ちはどうなのか。さまざまな課題を抱えながら、地域展開がどう進んでいるのか、現状を見た。

 スポーツ種目や文化芸術活動の協会などが主催し、拠点を設けて行う「拠点型活動方式」を、ハンドボールを例に現場を訪ねた。この種目では今年度、拠点は市内3カ所(羽津中、朝明中、笹川中)に置いている。このうち、5月の羽津中での練習は、「ヴィアティン三重ハンドボールクラブU15」との合同練習という形で実施された。

 ハンドボールは剣道など他の4種目と昨年から活動を始めて1年が経過。順調に進んでいるという。サッカーなどの11種目も今年度から開始となり、実際の活動も徐々に始まっているが、会場の都合で9月以降に開始する予定の種目もある。

 羽津中3年の川添心優さんは「校外の人に教えてもらい、ほかの学校の子とプレーもでき、刺激になる」と話す。また指導員としては同中OBで大学生の田畑央涼さんが登録して教えており、「中学生と交流し、競技にかかわれることが楽しい」とやりがいを感じている様子だ。指導員報酬の単価は大学生のアルバイトの平均時給より500円ほど高くなっているという。

 拠点型活動方式では、どの地域の中学校からも参加でき、社会人指導者や兼職兼業で参加する教員、退職後の教員らが指導している。

 拠点型とは別に、市内の総合型地域スポーツクラブが中学生の休日の活動を受け入れる「総合型地域スポーツクラブとの連携」がある。今年度は市内5つの総合型地域スポーツクラブと地域の学校が連携し、地域展開が進められていく見通しだ。

少子化でも活動できる環境を

 地域展開が求められる背景は様々だ、市立中学校では少子化で競技に必要な人数が確保できず、単独で試合に出られない運動部も増えた。校外でスポーツや文化芸術活動をする人も増え、昨年度から全市立中学校において部活動は自発的な加入になっている。ただ、市教委の中学生対象のアンケートでは、昨年度は9割が部活動に参加している。

 教員が休日出勤で行う部活動の指導は、負担ともなっている状況が明らかになっている。市教委が昨年度行った教員対象のアンケートでは、半数を超える教員が競技(活動)経験のない部の指導をしているほか、休日の指導を希望しない教員は6割近くにのぼった。

 地域展開後の指導者の不足を懸念する声も多く、県では中学校のスポーツ・文化活動の指導を希望する人を募る人材バンクを運用している。一方市内の拠点型活動や総合型地域スポーツクラブとの連携においては、既に活動している指導者が関係者に声をかけて人材の確保につなげているケースが多いという。

生徒たちの考えは

 当事者でもある中学生はどう考えているのだろうか。何人かに聞いてみた。

 前田誠也さん(内部中2年)は運動部に所属していたが、体力不足を感じて退部を申し出ると、転部を勧められた。校外で別の競技などの活動も視野に入れながら、熟慮し校内の科学部に転部した。科学部の友人関係が良好で、顧問の先生は理科の先生ではないが、きちんと指導をしてもらえていると感じているという。

部活動について語り合う中学生のみなさん

 どの学校でも、経験のない部活の指導をしなければならない教員たちがいる。本田悠人さん(同)も学校の運動部に所属しているそうだが、「地域で競技経験がある人に指導してもらうと、生徒のスキルは上がるのでは」と話している。

 上杉一叶さん(常磐中2年)は「水泳に集中したい」と考えて学校の部活動には参加せず、校外のクラブチームで水泳をしている。競技力を磨き東海大会にも出場し充実感を持って取り組んでいる。

 佐野日舞莉さん(同)は学校の文芸部に所属している。「土曜日は書道を習い、友達とも遊びたい。」と話し、部活動とも地域展開の活動とも違う時間の使い方をしようと考えている様子だ。

 中学生の放課後や休日の過ごし方は多様化し、親世代とは部活動のあり方が大きく変わっている。市教委の担当者は、「少子化時代を迎えるが、今後も希望する生徒がスポーツ・文化芸術活動に親しむことができる環境を整備していきたい」と話している。

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