史上最弱チームが、過去最大の成長を遂げた。三重県立四日市工業高校ラグビー部が、県予選で初の単独優勝を決め、花園への切符を掴んだ。エース不在のチームが、先輩たちが超えられなかった壁を超えた奇跡。その裏側に迫った。
決勝は毎年朝明と対戦

第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会(通称・花園)の県予選の決勝は9年連続、朝明高校と四工の対戦が続いた。四工は第100回記念大会で花園に出場している。これは東海地区代表としての出場で、朝明高を倒しての出場ではなかった。
昨年は優勝するも抽選で花園出場逃す
昨年の四工はエース級の選手が複数いて、「今年こそ花園に行ける」と、関係者の期待も大きかった。決勝の予選でリードするも、引き分けになり、両校優勝となった。花園出場は、抽選で朝明高に決まった。
多くの四工の選手は泣き崩れた。マネージャーによると、選手以外ロッカールームに入れない重い雰囲気だったという。

経験者少ない史上最弱チーム
渡邊翔監督によると、3年生が引退した新チームは「エース不在の史上最弱チーム」だった。

頼れる絶対的エースがいないため、3年生全員が「自分がやらないと誰がやるのか」という気持ちになり、2年生も前に出るようになった。花園予選決勝で部員らは「朝明との点差が12点までなら勝算がある」と考えた。トライ(5点)とコンバージョンゴール(2点)が2回決まれば逆転できるという計算だ。
前半は粘り強い守備とフォワードを生かした攻撃で10対10の同点。後半で朝明に追いつかれ一時10対22までリードされた。四工は諦めず粘り強さを発揮し、トライを2本を決め追いつき、ゴールキックが決まり24-22で勝利を決めた。
昨年の無念を晴らしリベンジ達成
昨年「朝明に勝ちきれなかった」と悔しい思いを語った副キャプテンの上原虎太郎さん(3年)は、同点トライを決め、昨年の無念を晴らした。

キャプテンの辻蓮さん(3年)は「朝明に最初のトライを取られて、気持ちが落ちかけたが、すぐに自分たちがゴール前まで進んで悪い流れを断ち切った」と話し、冷静にチームを立て直し、精神的支柱となった。
ベスト16で有終の美を
100回大会で花園に出た時は2回戦まで進んだ。辻さんは「今回もまずは初戦突破。ベスト16を目指したい」と笑顔で語った。3年生は全員卒業でラグビーは引退し、それぞれの道に進む。有終の美を飾るべく、彼らの挑戦は続く。








