「一度きりの人生を大切に」交通事故遺族の安田さん 高校で講演

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 2001年に三重県鈴鹿市の高速道路で起きた交通事故で、夫(当時35歳)を亡くした安田厚子さん(54)=四日市市在住=が6月22日、名張市東町の県立名張高校で開かれた「命の大切さを学ぶ教室」で講演した。安田さんは1年生約200人を前に「事故は1件も起きてほしくない。一度きりの人生を大切に歩んで」と語り掛けた。【生徒たちの前で講演する安田さん=名張市東町で】

 同教室は、事故や犯罪で家族を亡くした遺族たちの思いを伝え、命の大切さを知ってもらおうと、県警とみえ犯罪被害者総合支援センターが共催し、毎年県内各地の学校で開いている。講師の安田さんは「県交通遺児を励ます会」の会長も務めている。

 安田さんの夫は01年8月23日午後、東名阪自動車道で大型トラックの玉突き事故に巻き込まれて亡くなった。安田さんは、当時7歳の息子と2歳の娘とともに遺された。講演では、「平凡だった毎日が修羅場と化した」という事故当時の体験や、父親の死と向き合う子どもたちのエピソードなどを紹介した。

 事故当日、安田さんは翌日の家族旅行の準備をしながらテレビを見ていたところ、「多重玉突き事故発生、男性1名死亡」のニュース速報を目にした。「お気の毒に」と思っていたが、しばらくして自分の夫が巻き込まれたことを知り、病院到着後に受け入れがたい現実を目の当たりにした。悲しみのピークは葬儀中ではなく、夫がいないことが現実味を帯びてくる、その後の日々だったという。

 事故前夜に息子と野球盤で遊びながら「続きは明日な」、事故2時間前の電話では家族旅行の話題で「明日が楽しみやな」と話していたという夫。安田さんは「誰も明日を奪われないよう命の尊さを伝え、感謝して生きる」と考えてきた約20年間を振り返った。

 安田さんは生徒たちに、「事故はニュースの中の出来事ではなく、誰にでも起こり得ること。一人ひとりの安全意識が高まり、みんなで事故ゼロにつなげていけたら」と思いを語った。

 講演を聞いた久保慎吾君(16)は「命の大切さを改めて感じた。自分が自転車を使う時も、気を付けていきたい」と話していた。