伝わる愛情、熱意、実績 令和4年度の四日市市文化功労者に聞く

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 今年度の四日市市文化功労者が発表され、YOUよっかいちは11月3日の表彰式を前に、選ばれた2氏1団体に喜びの声を取材した。それぞれが歩んできた分野は異なるものの、みなさんの話しぶりからは愛情と熱意が強く感じられた。【四日市市文化功労者に選ばれた永井更生さん(上段右)、駒田英市さん(同左)、羽津郷土史と民俗研究会のみなさん】

 永井更生さん(書道分野)

書道分野からは四日市市北町、永井更生(天鱗)さん(87)が選ばれた。第43回全国書道展覧会(1990)の文部大臣賞、第37回全国書道展覧会(1984)以降、複数回の三重県知事賞、第14回四日市市美術展覧会(1986)の市長賞、第63回みえ県展(2012)の自然の恵み賞など、数々の受賞歴があるほか、三重県書道連盟などの役員、四日市市美術展の審査員を務めるなど書道界の発展にも努めた。

 愛知県生まれで、すぐに中国へ渡り、日本に戻ってから本格的に書道に打ち込んだ。「師にも恵まれました」と話す。現在は墨友会顧問なども務める。「世の中の変化で、若い人が書に触れる機会が少なくなってきています。これを機に、『やはり筆の文字はいいな』と伝えられる活動をしていきたいと思います」と喜びを語った。

 駒田英市さん(伝統文化分野)

 伝統文化分野からは四日市市南納屋町、駒田英市さん(93)が選ばれた。南納屋町鯨船保存会で県指定有形文化財鯨船「明神丸」の維持管理に長く携わったほか、鯨船行事の技術、歴史、唄、演技、装飾品や備品の保守点検や制作など全般に詳しい第一人者で、「駒田さんがいなければ始まらない」と言われるほどの指導的な役割を果たしてきた。

 金細工などをこらした鯨船は、戦時中はぜいたく品とみなされ、没収される可能性もあったが、当時の地域の人たちが秘密で飾りなどを疎開させた。駒田さんも先人の苦労を引き継ぎ、1947年の復興まつりに17歳で参加、翌48年には鯨船そのものも復興再現され、以後、ずっと祭りに参加し続けたという。「さすがに93歳なので、ついていくのがやっとです」と謙遜するが、今でも唄うことができ、今年も秋の四日市祭りに参加している。

 羽津郷土史と民俗研究会(郷土史研究分野)

 郷土史研究分野からは、四日市市羽津町の羽津地区市民センターを拠点に活動している羽津郷土史と民俗研究会が選ばれた。羽津地区郷土史研究会と羽津地区民俗同好会が合併した団体で、活動歴42年。郷土史誌「はづ」を第3集まで刊行し、小冊子や地域の広報での連載などの形で成果を発表してきた。2006年から講座「羽津学」を開いており、歴史のほか地域の生き物や民話、土地利用の変遷など幅広く解説している。県内各地を一般参加者と観光バスで訪ねる「文化財めぐり」も開いている。

 羽津地区は海あり山あり、歴史ありの豊かな地域。岩田英郎会長(88)は「引き続き、羽津について調べていきたい。昔を知る人がいなくなっていくので、古い資料を見直して、整理し直すことも必要かなと思っています」と話す。現在の会員は約20人。若いメンバーも歓迎という。