ひとり親家庭の貧困支援 痛みを和らげる絆創膏になりたい

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臨時で開かれた子ども食堂の様子=四日市市富州原町の55カフェで

 コロナ禍で収入が減ったひとり親家庭に、物価高が追い打ちをかける。「子ども食堂55」を運営するNPO法人「三重はぐくみサポート」の理事長・山田知美さん(50)は、食品や生活用品などを配布する「はぐくみエイド」を開き、支援に必要な寄付も募っている。

 厚労省の2019年の調査によるとひとり親家庭の48・1%は貧困家庭。今年に入り食品やガソリンなど値上げが相次ぎ家計への影響は深刻だ。

 子ども食堂の会場の「55カフェ」を経営する山田さんは、11年前に息子を連れて家を出た。事情で店を移転すると売り上げが減少。金銭的に厳しく店の残りのパンの耳を食べていたこともあった。親にも頼れず、ママ友にも「食べるものがない」とは言えなかった。離婚経験のある人なら理解してもらえると思い、打ち明けられたそうだ。その経験から、「困った人の灯台のような場所を作りたい」と6年前に、子ども食堂を始めた。

 食堂には困難を抱える人たちも来る。皆の輪に入れず白いご飯しか食べられない子、自転車を10キロ以上こいで来る親子、子どもの荷物だけまとめ、着の身着のままで夫から逃げ、助けを求めてきた人――。必要に応じ行政や支援団体につないだ。相談されると一緒に解決策を考えるが、まずは相手の話に耳を傾ける。

 感染対策で食堂は弁当配布になった。コロナ禍前は、食堂参加登録は20世帯だったが、今は48世帯。はぐくみエイドの参加者を合わせると1か月のべ350人ほどに。経済的な問題だけでなく、人との交流が困難で食堂に参加できず「弁当配布なら大丈夫」という人もいる。

 「月に一度弁当や物資を渡すだけでは助けにならない」という指摘もあるが、顔を合わせることで安否確認ができ、相談にも乗れる。山田さんは「貧困という症状の治療はできないが、痛みを和らげる絆創膏になりたい」と笑顔で語った。

 はぐくみエイドや子ども食堂への協力は同法人のホームページで情報発信しており下記の2次元バーコードから閲覧できる。

同法人への支援はこちら

※2022年11月5日(213号)発行 紙面から

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