全国1%の味 伊勢蔵

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 大正3年(1914年)創業、味噌としょうゆを製造販売する伊勢蔵(四日市市泊町)は、伝統の製法を守り、受け継がれてきた木桶で、独自の味を生み出している。

 五代目の社長・式井一博さん(42)は、大学では経営工学を学んだ。家業を継ぐ思いはあったが、卒業後は「外の世界を経験したい」と製パン会社と機械工具の会社に勤務。2004年に伊勢蔵に入社した。

 創業から続く製法は思った以上に繊細な作業と力のいる仕事。発酵、熟成の進み具合は熟練の職人しか見極められず、父の下で経験を積んだ。  

 最も重要なのは麹づくり。発酵は温度や湿度に影響される。設定温度から外れるとセンサーが反応し警告音がなる仕組みを導入。夜中でも起きて適した温度や湿度になるよう、送風機の風量と風向きを調整、三日三晩の気の抜けない作業だ。

 製造には、創業以来同じ杉桶を使う。桶仕込みは、仕込んでいくうちに菌が宿って「蔵くせ」といわれるその蔵特有の風味を醸し出す。式井さんによると、大量生産のためステンレス製のタンクで製造する同業者がほとんど。木桶をつくる職人も不足しているそうで、養成にも関わっているそうだ。

 同社には料理研究家や飲食店から、料理にあったオリジナルブレンドの味噌やしょうゆの注文や、伊勢蔵の商品を使ったポン酢などの注文も入る。店では顧客から「あんたの所のしか食べれん」と言われる。式井さんは「木桶で仕込んだ全国で1%しかない味を体感してほしい」と語った。

※2022年12月3日(214号)発行 紙面から