四日市の上田重幸社長が名城大学卒業、国家資格の「技術士」めざし、あらためて勉強

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 三重県四日市市にある株式会社上田新工業の上田重幸社長(50)が、3月17日に名城大学を卒業した。五大国家資格にも挙げられる「技術士」に挑みたいと、基礎から勉強しようと思い立った。予想以上に厳しい理系科目などの学習に、自らの意識の9割以上を集中させたというハードな4年間。会社の部下や家族の応援も得て、ストレートでの卒業を達成した。【名城大学を卒業し、学位記などを手にする上田重幸社長=四日市市河原田町、提供写真】

 上田さんの会社は、1945年に板金工業所として発足。その後、排水処理プラントの機械設備工事を受注するなど、公共、民間を問わない水に関する施設や設備の提案や工事などをしてきた。上田さんは3代目の社長にあたる。

 仕事の関係から、上田さんは建設関係など幾つもの資格に挑戦したが、理系では最高の資格へのあこがれと、今後の自らの仕事にも役立つのではとの思いから、技術士の国家資格に挑戦したいと考えるようになった。

 社長就任から3年後の2017年、技術士の下の「技術士補」の試験で不合格になった。このことで、「基礎から学び直したい」との思いを強くし、技術士補と同等の教育システム(JABEE認定)がある名城大学に2019年、社会人入学した。

 名城大学では理工学部メカトロニクス工学科へ。ところが、入学翌日の物理の基礎学力試験が0点で、「大学なんてお客様生活だろう」との思惑は大きく外れた。名古屋に部屋を借り、朝6時から午後10時まで大学で過ごす猛勉強を始めた。それでも、1年前期では半数の単位を落としてしまったという。(大学での4年間を語る上田重幸社長)

 夏休みは家庭教師を雇って微分積分を徹底的に復習した。1年後期は他学科の先輩に家庭教師をお願いし、後期試験では単位を取得できた。2年生からは新型コロナによるリモート講義も体験。苦労もあったが、30歳近い年下の友人もできて、勉強は随分しやすくなったという。3年生ではグループで傘の自動乾燥機を設計、制作した。卒業研究のテーマは「モーターによる騒音消音制御」。音の波の作用を利用して騒音を消すという内容だ。

 社長にしかできない仕事はあったが、多くは信頼する専務が担ってくれた。同業者とのつきあいが遠くなり、「病気か」とうわさになったことも。今では、周囲の応援があってこそできた大学生活だと思っている。

 17日の卒業式は名古屋で。友人らと食事など楽しいひとときも過ごした。技術士の試験は夏ごろにあるといい、今回の大学卒業で、JABEE認定により1次試験が免除される。論文と面接に備え、勉強は4月以降も続く。

 「様々なことに挑戦する人や、勉強や仕事に躓いている人に方法などを教え、最も重要なのは友達など時間を共有できる仲間をつくることだと伝えていきたい。技術士の資格を得たら、地元の四日市や三重県へ技術で寄与したい」と考えている。(卒業式会場の上田重幸社長=提供写真)