垣間見える「人」が魅力、70年大阪と05年愛知を経験した記者が見た大阪・関西万博

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【今万博のシンボル「大屋根リング」から見た会場=大阪の夢洲】

 大阪・関西万博へ行ってきた。1970年大阪万博の時は中学生、2005年愛・地球博では会場内のイベントの担当者だった。毎回、新技術が注目される万博だが、展示や運営に裏側に、「人」の姿が垣間見え、それも魅力だった。(Youよっかいち記者N)

 シャーレの中の指先ほどの丸い切片が、呼吸をするかのようにぴくっと動く。大阪ヘルスケアパビリオンのiPS細胞は、70年大阪なら月の石、愛知ならマンモスのような目玉展示のひとつ。血液を思わせるオレンジ色が印象的だ。

丸い小さな切片が動くiPS細胞の展示

 フランス館はルイ・ヴィトンやディオールなどの作品をロダンの手の彫刻とともに展示。人の手仕事に思いが向かう。イタリア館は地球を担ぐ「ファルネーゼのアトラス」が日本初展示で、レオナルド・ダ・ヴィンチの設計素描など、人類の知恵の遺産をメーンに据えた。

ルイヴィトンのスーツケースを柱にしてできた部屋
日本初展示の「ファルネーゼのアトラス」

〇企業パビリオンが大人気だった愛知

 70年大阪は中学の社会見学でバス旅行。会場に着いた時はアメリカ館はすでに大行列で、月の石はあきらめて、当時は2大国のひとつだったソ連館や、後に四日市市に移転されたオーストラリア館などを見た。外国のものなら何でも物珍しかった。

 愛知では、前の勤務先の新聞社も参加した愛地球広場で、携帯電話で個人の顔を読み込む、その人だけの記念新聞「マイペーパー」を発行した。大阪万博の時から日本経済は大きく発展、トヨタ自動車など企業パビリオンが大人気だで、朝早くから長い列ができた。

 今回、大阪・関西万博に行ったのは開幕4日目の4月16日で、一般入場者は5万6000人。愛知も開幕直後は同じような数字で、「会場ガラガラ」などと冷やかされたものだが、夏から秋になると20万人を超える日も多かった。

 会場の第一印象は、大阪・関西は愛知よりも企業パビリオンが控えめで、大屋根リングの中の海外パビリオンに目が向かう。よく言えば、海外の国をお迎えし、バランスの取れた世界を表現した会場といえる。

マレーシア館での民族舞踊の披露に集まる観客

□三重の展示は引き出しが人気

 関西パビリオンでは、三重も連携団体として展示している。三重県ブースのテーマは「日本のこころの原点~美し国みえへとつづく時を超えた物語~」(243号紙面で載せられなかったテーマ全文を掲載します)。北勢、中南勢、伊勢志摩、伊賀、東紀州の地域別の特色をマルチスクリーンに投影している。四日市からは萬古焼やトンテキも登場。ブースのスタッフは忍者の装束で、気になる場所などがあれば説明してくれる。

 人気だったのが、スクリーンの壁面に埋め込まれた引き出しで、開けると地場産品の茶や日本酒の香り、赤目四十八滝の水の音などを体験できる。人臭いアナログの仕掛けが受けるところが面白い。

地域のスクリーンに埋め込まれた引き出しを開ける入場者

 現地にいた三重県雇用経済部の森川京香さん(27)は四日市出身で、東紀州の地域振興担当も経験してきた。「三重ってこんなにいろんなものがあるの?と驚く方が多くて新鮮です」

 ウクライナの展示も印象的だった。棚に並ぶ「非売品」のタグを読むと、戦火の中で勉強する子どもたちの姿などが映像で浮かび上がる。悲しい戦争も人がすることだ。

商品のタグをピストル型画面で読み取ると戦火の風景が

〇ボランティアの気持ちも温かく

 午後、妻の足が痛み、腰をおろしていると、すぐにボランティアのスタッフが駆けつけてくれた。夜、帰りのゲートでは、ボランティアの「大阪のおばちゃん」が並んで手を振っている。おもてなしの気持ちもうれしい。

【大阪・関西万博お役立ちメモ】

東ゲートを入るとミャクミャクがお出迎え

 大阪・夢洲を会場に158の国や地域などが参加し、10月13日まで、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに展示や催事が行われる。

 会場は約155ha(東京ドーム約33個分)とされ、愛・地球博よりはやや狭いが、既存の公園を利用して複雑な地形をしていた愛知に比べると、平らな埋め立て地を大屋根リングで囲んだ中にパビリオンの多くが配置され、歩きやすさでは大阪・関西の方がやさしい印象だ。ちなみに大屋根リングは高さ12m、幅30m、一周約2㎞。屋根の下はベンチの数も多く、風が吹き込むような激しい雨でなければ、日よけ、雨よけに役立ちそうだ。

〇電子チケットは写真にしておくと便利

 入場には東ゲートと西ゲートがあり、地下鉄で直結している東の方が利用者は多い。比較的空いている西から入る手もあるが、人気パビリオンの多くはやや東側に多い印象。入り口では荷物検査があり、瓶と缶の飲みものは持ち込めない。デジタルの入場チケットはあらかじめスクリーンショットなどで二次元コードを写真にしておくのが確実。通信状態が悪い場所もあり、パビリオンに入る時もチェックが必要なこともあるので、その都度、通信するより早い。

〇地図は紙で持参する方が便利

 地図も事前のダウンロードなどで紙の形にしてもってくことをお勧めする。パビリオンのほか、トイレ、給水所、休憩所の確認は、通信で見るより、いつでも何度でも見ることができる紙の方が便利だ。

 食事は、海外パビリオンなどではお国自慢の料理やワインもあり、財布と相談してお楽しみを。フードコートやキッチンカーなど選択肢は多く。値段はピンからキリだが、1食1人、飲み物などとセットで2000円前後になる印象だった。飲みものの自動販売機も現金は使えないので、クレジットカードなどキャッシュレスの決済手段をお忘れなく。

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