三重県いなべ市大安町の貨物鉄道博物館で復元作業が続いていた「旧関西鉄道鉄製有蓋貨車」が出来上がり、5月4日、展示された貨車の前で、復元をどう進めたかなどを解説する説明会があった。連休で天気にも恵まれ、多くの人が訪れ、説明会を聞いたり、写真に収めたりして過ごしていた。
貨車の復元は、2023年9月の開館20周年に合わせた記念事業だが、予想以上に車体が傷んでいたほか、あらたにつくらなければならない部品も多く、完成まで、なお1年余りを要した。全国の鉄道ファンのボランティアが手作業で進めてきた修復でもあり、博物館の南野哲志常務理事が説明を終えると、聞いていた100人余から大きな拍手が贈られた。

貨車は長さ4.5m、幅2.3m、高さ2.1m(床下を加えると3.2m)。1900年にJR関西線の前身を運営していた旧関西鉄道の四日市工場で製造された。現存する中では国内最古級の貨車だという。1907年に旧関西鉄道が国有化され、貨車は最後は関東で務めを終えたらしい。その後、関東鉄道竜ケ崎線の竜ケ崎客車庫で倉庫として使われていたが、そのままでは解体される運命だったところ、博物館が交渉し、譲渡されたという。
博物館は2023年にクラウドファンディングで復元費用の支援を求め、目標300万円に対し約450万円が寄せられた。それでも、最近の鋼材などの資材高騰や、あらたに設計からつくる必要があった部品も多く、100万円以上の赤字が出ているという。今後、連結器やブレーキ装置の復元なども望んでおり、博物館内の募金箱やネットでの寄付案内などで引き続きの協力を求めている。

貨物鉄道博物館は三岐鉄道三岐線丹生川駅に隣接し、今回の貨車を含む車両などを屋外に展示、屋内では鉄道模型や貨物鉄道関係の資料を見られるようになっている。毎月第一日曜日に開館する。10月まで、博物館内に貨車復元の記録をボードで展示し、理解できるようになっている。6月には、復元の記録や旧関西鉄道についてまとめた約250部限定の図録(税込み1000円)の発行も予定しているという。
