小さな手が触れるその瞬間を思い浮かべながら、高校生たちは木を削った――。三重県立四日市中央工業高校(四日市市菅原町)の木工部が、三重県民の森(菰野町千草)にある「みえ森林教育ステーション」の看板を新たに制作した。「子どもたちが安心して触れられるように」との優しい願いが込められている。

木工部は「人の役に立つものづくり」を掲げ、棚や枡、ベンチなど、依頼を受けてさまざまな木工品を手掛けてきた。昨年末には、死産した赤ちゃんのための小さな棺を作り、母親の気持ちに寄り添った。これまでの作品は大人向けが中心で、子ども向けの看板は部員にとって新しい挑戦だった。
子どもが楽しめるものを
現地を訪れると、看板は子どもの胸の高さほどに設置されていた。木にささくれがあれば、小さな指を傷つけてしまう。置かれているおもちゃもすべて角のない木製で、細やかな配慮が行き届いていた。「子どもが楽しめるものを」という依頼の意味が、部員たちの胸にすとんと落ちた。

文字づくりに込めたこだわり
制作の中心を担ったのは、副部長の山口洸介さん(2年)だ。「看板は文字が命」と考えた山口さんは、まず文字の試作から取り掛かった。部長の上田琉斗さん(2年)がデザインした字体をもとに、のこぎりで粗く切り出し、糸のこ盤で細部を整えた。
しかし、少し力を入れただけで文字が折れてしまう。画数の多い漢字は隙間に指が入らず、細い棒に紙やすりを巻き付けて、ひたすら滑らかにしていった。

経験の浅い1年生は、削れば削るほど凹凸が増えてしまい、「何のためにやっているのか」と自信を失いかけた。それでも先輩に教わりながら、時間をかけて表面を整えていくうちに、少しずつ手の感覚が育っていった。
最後の難関は「配置」
飾りには動物や昆虫のキャラクターを採用。部員一人ひとりが担当を持ち、木の風合いを生かすために塗料は使わず、レーザーで焼き色をつけた。強すぎれば焦げ、弱すぎれば色がつかない。微妙な調整に苦戦しながらも、木目を生かした温かい表情が生まれた。
子どもたちの笑顔が、最高のご褒美
最後の難関は、文字とキャラクターの配置だった。「見やすさ」「優しい雰囲気」「子ども目線」といったそれぞれの思いがぶつかり、声が荒くなる場面もあったという。それでも話し合いを重ね、最終的には全員が納得する形に落ち着いた。「みえ森林教育」を曲線に、「ステーション」をまっすぐに並べ、柔らかさと読みやすさを両立させた。

24日、看板は無事に引き渡され、現地に設置された。その日のうちに、子どもたちが看板に触れ、笑顔を見せた。その光景を見た瞬間、部員たちも笑顔になった。

四中工木工部はInstagramで活動の内容を発信している。https://www.instagram.com/yonchuko_mokkobu/?hl=ja#









