三重県立四日市中央工業高校の木工部は、繊細な技術と使い手への思いやりを大切にしたものづくりで、地域から親しまれている。このほど、長年同部を応援してきた酢専門店のためにベンチを制作し、「学生の手でつくる価値は唯一無二」と喜ばれている。
高校生が取り組む“人に寄り添う木工”
創部以来、校内外からさまざまな木工製品の制作依頼を受けてきた。2023年のG7三重・伊勢志摩交通大臣会合では、レセプションで使用された枡を制作するなど、活動の幅は広い。「人の役に立つものづくり」を掲げ、細部まで工夫を重ねている。

死産した赤ちゃんの棺に込めた思い
昨年は看護師から依頼を受け、死産した赤ちゃんの棺を制作した。悲しみに寄り添えるよう、棺の蓋を閉める際に、余韻の残る閉まり方をする加工をするなど、細やかな工夫を施したという。制作の様子を紹介したYOUよっかいちのウェブ記事は反響を呼び、記者のインスタグラムの個人アカウントに掲載した投稿は150万回以上閲覧された。死産を経験した人からの感謝の声が相次ぎ、同校にも「素晴らしい取り組み。応援しています」と励ましの電話が寄せられた。

VISON「MIKURA Vinegary」からの依頼でベンチを制作
今年2月には、多気町の商業施設VISON内にある酢の専門店「MIKURA Vinegary」の店舗前に置くベンチを制作した。

同店からは開店以来、看板や棚などの依頼が続いている。今回のベンチには、設置場所のわずかな傾斜にも対応できるよう、脚の高さを調整できるアジャスターを取り付けた。
副部長の山口洸介さん(2年)は「自分たちでは気づかない点を指導してくれる顧問の先生の技術と気遣いに、いつも学ばされている」と話す。

普段の活動では、部員が作りたいものに挑戦することもある。部長の上田琉斗さん(2年)は、料理人の祖父のために長い包丁が収まるスタンドを制作し、喜ばれたという。

顧問の伊藤了教諭は「卒業して建築などの現場に出る前に、人の心に寄り添う経験をしてほしい」と語る。

同店の伊藤志乃社長も、伊藤教諭の人柄と学生への思いに共感し、依頼を続けている。「時間がかかっても完成を待つ。私たちのことを想像しながら、世界に一つだけの製品を作ってほしい。高校生活の一場面として記憶に残るなら嬉しい」と話す。
地域の木工業者・林業者が支える“学びの循環”
木工部を支えているのは同店だけではない。枡やベンチの制作では、新しい作品を制作する過程で生まれる悩みををサポートする木工作家や、材木を提供する「三浦林商」など、多くの地域の人々が協力している。伊藤教諭は「三重の木材を使い、依頼した人に使ってもらうことで循環型社会の実現につながる。私たちはプロではなく、失敗ややり直しもあるが、次の世代のために取り組む姿勢に共感してもらえたら」と話した。
四中工木工部はインスタグラム(https://www.instagram.com/yonchuko_mokkobu/?hl=ja#)で活動の内容を発信している。









