1歳からの音楽教育に注目 脳と心を育む「適期教育」とは

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カワイ音楽教室の幼児レッスン。カラフルなスカーフ、ボール、タンバリンで遊ぶ親子と講師。奥にグランドピアノ。

技術より「土台」作り

 新年度を控え、子どもの習い事を検討する家庭が増える時期を迎えた。教育熱心な家庭が多い四日市周辺でも、定番の「音楽」は常に関心が高い。一方で、「楽器を弾くにはまだ早い」「落ち着きがない」とためらう声も根強い。早期の音楽教育にはどのような利点があるのか。60年以上の歴史を持つカワイ音楽教室三重事務所の村松碧輝さんに話を聞いた。
 「音楽教室というと、鍵盤の前に座って指の練習をするイメージを持たれがちだが、幼児期は全く違う」と村松さんは話す。1歳から3歳は脳が最も急速に発達する時期とされる。この段階で重要なのは、技術の詰め込みではなく、音楽を通して五感を刺激し、あらゆる能力を吸収するための「器(土台)」を作ることだという。音楽に合わせて体を動かすリトミック活動などは、目や耳から入る情報を脳で処理し、体で表現する高度な脳のトレーニング機能も果たしている。

ピアノの魅力を話すカワイ音楽教室三重事務所の村松さん
音楽教育の魅力を話すカワイ音楽教室三重事務所の村松さん

遊びの延長で社会性育む

 「じっとしていられない子どもが、まともにレッスンを受けられるか」という保護者の懸念に対し、村松さんは「音楽が鳴って走り出すのは、全身で音を感じ取っている証拠」と説明する。幼児期のグループレッスンは遊びの延長線上に位置付けられている。
 「お友達と一緒にリズムに乗る、先生のピアノを聴いて止まる、教具を使って自己表現をする」
 こうした自由な活動を通じ、子どもたちはルールや順番を守ること、そして協調性や社会性を自然と身につけていくそう。「ダメ」と行動を制限するのではなく、あふれるエネルギーを音楽という枠組みの中で発散させることが、自己肯定感や豊かな表現力の向上に繋がるという。同じ空間で学ぶ同世代の存在も、子ども同士の良い刺激となり、精神的な成長を後押しする。

3歳は「聴く力」の黄金期

 また、3歳は「聴く力」が一生で最も伸びる時期とされる。この時期に音の高さやリズムを正確に捉える「音楽的な耳」を育てておくことで、将来本格的に楽器を始める際の大きなアドバンテージとなる。さらに、聴覚の良さは言語の習得にも直結する。相手の言葉のニュアンスを汲み取り、他人の話をしっかり「聴く」姿勢を育むなど、良質な音楽環境が日常のコミュニケーション能力にもたらす好影響は計り知れない。

人工知能時代に求められる「人間力」

 村松さんは、これからの時代における音楽教育の意義についても言及する。人工知能が進化し、あらゆるものがデジタル化されて便利になる世の中において、自らの指先で音色を変える繊細な感性や、思い通りにいかないもどかしさを乗り越える経験は、画面越しでは得られない財産となる。
 鍵盤を叩く強さ一つで音が変わるという「生身の表現」や、「できない」が「できた」に変わる瞬間の喜びは、子どもに揺るぎない自信を与える。そうして培われた集中力ややり抜く力は、将来、勉強やスポーツなど他の分野に挑戦する際にも、すべての土台となる「基礎体力」として必ず役立つはずだ。

生きた体験が一生の財産に

 知識が容易に手に入る現代だからこそ、自分の耳で聴き、心で感じ、体で表現する「生きた体験」が子どもにとって重要となる。村松さんは「まずは、親子で音楽を楽しむことから始めてみてほしい」と呼びかける。習い事選びに迷う家庭にとって、この春の体験レッスンは、子どもの新たな才能と可能性を発見する貴重な機会となりそうだ。

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