さまざまなイベントが催され、来場者でにぎわう様子が連日報道されている大阪・関西万博。最新のデジタル技術による未来志向の展示が並ぶ会場で、55年前の大阪万博から続く、形に残る思い出作りとしておなじみの「スタンプラリー」が注目を集めている。
◆昭和の万博スタンプ帳 レトロ×カラフル
四日市市新々町の印章店「太古堂」店主、小林克司さんは、10年ほど前にオークションで手に入れた1970年開催の大阪万博記念スタンプ帳を大切に保管している。日ごろから、古いスタンプ台を収集しており、同スタンプ帳はいつものように「シャチハタ スタンプ台」と検索する中で、たまたま見つけて落札したそうだ。
フジパンやクボタ、ぺんてる――。どれもカラフルでありながらレトロな雰囲気のスタンプの中で、ひときわ目を引くのが、アメリカの人気女優マリリン・モンローの顔をデザインしたスタンプだ。「唇だけ赤いこのスタンプは、おそらく2種類のスタンプを組み合わせて押すものだったんじゃないかと思います」と小林さん。「1965年にシヤチハタさんが開発した、スタンプ台でインクをつけずに連続で押せる『Xスタンパー』ですが、大阪万博では『生活産業館』というパビリオンで2色や3色のスタンパーが設置されて人気だったそうです。でも通常多色のスタンプは色が混ざらないように、直線的に色を変更するデザインになるはずなので、このマリリン・モンローは顔と唇を別々に押す仕組みだったと思いますね」。

【55年前の大阪万博の記念スタンプ】
◆令和のスタンプラリー 200種を超える多様性
2025年の大阪・関西万博でもスタンプラリーは健在。なんとその数はパビリオンや国ごとに用意された公式スタンプだけでも200種類以上。スマートフォン対応のデジタルスタンプも登場し、「懐かしくも新しい」楽しみとなっているようだ。
開幕4日目に赴いたYouよっかいちのN記者が押してきたスタンプを見せてもらった。取材で時間をかけた関西パビリオンの各県を中心に、海外ではフランス、ドイツ、ウクライナのスタンプがあった。一般入場者が5万6000人の時で、パビリオンの見学後、それほど待たずにスムーズに押せたそうだ。「あらかじめ公式のスタンプ帳を用意してきている人が多かった」といい、スタンプラリーへの興味の高さがうかがえる。
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【写真 大阪・関西万博でN記者が押したスタンプ】
◆未来へつなぐ「押し跡」
「やっぱり、自分の手で押す行為が楽しいんですよね」と、前出の小林さんは話していた。単なる記念品ではなく、スタンプラリーには「歩いて巡る」「発見する」「記録する」という自分だけの体験の行程が詰まっているのだ。
1970年当時のスタンプ帳のように、2025年のスタンプも、50年後には未来の誰かにとって「当時の文化の証拠」になるかもしれない。