三重県立四日市農芸高校(四日市市河原田町)の服飾経営コースの生徒たちが、死産した赤ちゃんを見送るための布団を作った。小さな命を包む布団には、生徒たちの学びと願いが込められている。
技術を磨き、地域に根ざす学び
服飾経営コースの生徒は、授業でドレスや浴衣の制作を学んでいる。校外の人からの依頼で祭りの法被や、四日市商店街のからくり人形「中入道」の衣装を制作したこともある。卒業生の中には、アパレル業界や和裁士として活躍する人もいる。

グリーフケアとの出会いが導いた挑戦
今年4月、中村通子教諭が四日市市内で開かれたグリーフケアの講演会に参加。看護師の洲上雅子さんが、死産した赤ちゃんのために棺や布団、服を届ける活動をしていることを知った。中村教諭は30年ほど前、知人の看護師から「流産や死産した赤ちゃんは医療廃棄物として処理されることがある」と聞き、強いショックを受けた経験があった。洲上さんから「棺は四日市中央工業高校の木工部に依頼している」と聞き、「農芸の生徒たちに布団を作らせてもらいたい」と申し出た。

命を包む布団づくり
7月には洲上さんを招き、服飾経営コースと生活福祉コースの生徒を対象に講演会を開催。12月10日、服飾経営コースの生徒たちは布団の生地を裁断し、ミシンで仕上げた。掛布団、敷布団、枕をセットにし、27組が完成。遺体から体液がにじむことを考え、中には紙おむつも入れた。

宮本純衣さん(3年)は「使うことを望まれないもの。それを作ることが、とても複雑な気持ちになった」と語った。吉岡舞香さん(同)は母から「あなたにもお兄ちゃんがいたのよ」と聞かされ、この活動が「母親の慰めになるのでは」と感じたという。
受け継がれる願い
完成した布団は静かに母親たちのもとへ届けられる。幼い命を見送る活動はこれからも同高で受け継がれていく。その布団には、生徒たちの優しさと「使われないことを願う祈り」が息づいている。
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