庭にたくさんの草木が育ち、四季折々の花が咲き誇る西唱寺(四日市日永4)の本堂前には、樹齢約150年と伝わるボダイジュがある。多くの命が失われた1945年6月の「四日市空襲」では本堂や書院が全焼してしまったが、この木は半分は焼けたが全焼は免れたという。

 終戦間近に生まれた中川法雄住職(72)が両親らから聞いた話によれば、南方から飛んできた爆撃機が焼夷弾を落とし、本堂や庫裏、太子堂、書院などが焼き払われた。寺宝や古文書なども焼失し、戦後に「以前見せてもらった太刀を見せてほしい」と尋ねてきた研究者が戦火で焼失したことを知り、残念がっていたこともあったそうだ。

 空襲を受けた際は、東から「台風のような強風」が吹いたが、風向きに助けられたのか、鐘楼や門も延焼を免れた。寺の周囲には田んぼが広がっていたが、焼夷弾が落ちて大きな穴が開き、池のように水が貯まっていた記憶がある。また物資不足のため寺の鐘も供出していた。

 ボダイジュは毎年、5月下旬から6月ごろに花を咲かせ、その後実を付ける。「今年も花が咲き、実もなりました」。中川さんは、物心ついたころから見てきた木を見つめながらつぶやいた。