「いじめ助けてくれる人いる」

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四日市出身お笑い芸人 「オレンジ」田中哲也さん

 お笑いコンビ「オレンジ」として活躍する「名古屋よしもと」所属のお笑い芸人、田中哲也さん(41)(四日市市出身)は、中学時代や芸人になってからのいじめの経験を語り、芸を通して培ったコミュニケーション能力を生かして笑いに変える前向きな姿を、講演会や動画、著書を通じて伝えている。【オンライン取材に応じた後の田中さん(提供写真)】

 陸上部に在籍していた中学時代、部室に閉じ込められるなどのいじめに遭った。「自転車を壊されたり、蹴られた靴跡が制服に付いていたりすると、いじめられていることが周囲に分かると思い、苦しい言い訳を繰り返していた」。自分から「いじめられている」とは言えないけど、誰かに気づいてほしいと願った。限界を感じ、「命いらん」と思った時、「元気を出して、もう泣かないで」という歌詞のアニメの主題歌に勇気をもらった。大人になってその曲を聞くと、失恋ソングだったと分かり、今ではその勘違いをネタにしているそうだ。

 高校卒業後、吉本興業のタレント養成所で出会った泉聡さん(47)と19歳の時にコンビを結成。東海地区を中心に人気が出たことで先輩芸人からいじめを受け、同じ楽屋にいられなくなった。本番まで姿を隠す日々が続き、「芸人を辞めよう」と思いつめて泉さんに相談すると、6歳年上の泉さんは「そんなやつ、相手にするな」と、先輩との間に入ってくれた。初めて頼れる人に出会えたことが心底うれしく、「芸人を続けられる」と安堵(あんど)した。

 25歳ごろから始めたブログで、ファンや読者からのいじめの悩み相談に答えていたところ、愛知県内の教育機関から講演依頼が舞い込んだ。以後、小中学校や高校を中心に計50回以上講演し、昨年は四日市市教育委員会の教員向け研修会でも講師を務めた。また、昨年出演したテレビ番組をきっかけに、泉さんとの対談形式の本「笑撃!オレンジのいじめ絶滅計画」を今春出版した。

 陸上部でのいじめの経験から、走ることは嫌いになっていたが、吉本興業の宮川大助・花子さんの名古屋公演の際に付き人を務めた縁で、ホノルルマラソンに誘われ、一緒に走った。再び走るのが楽しくなり、ここ数年は100キロマラソンに挑戦。9時間46分という好記録を出し、〝お笑い界100キロ最速ランナー〟という勲章も得た。

 コロナ禍の現在は、主に動画投稿サイト「ユーチューブ」で、「助けてくれる人が必ずいるから、助けを求めて」「今でも勘違いばかりでポンコツな自分だけど、生きることを楽しんでいる」とメッセージを伝えている。

(2020年9月12日発行 YOUよっかいち第187号掲載)

 

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