Wクリエイターでいい夫婦 四日市拠点に活動

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虫眼鏡を使ってイモムシを見る桃山さん(左)と伊藤さん

 11月22日(火)は、いい夫婦の日。「ヒロミチイト」として活動するイラストレーターの夫・伊藤弘通さんと、昆虫画家の妻・桃山鈴子さんは、仲睦まじく四日市市内の自宅兼アトリエで創作活動に励んでいる。夫は雑誌のイラストや本の装画など幅広く活躍、妻はイモムシの画で世界的な広告賞を受賞した。

グッとくる絵

 伊藤さんは生まれも育ちも四日市市。幼少期から絵を描くことが好きだったが、自身のスタイルを貫くため美大には行かず、京都の大学で経済学を学んだ。将来について考えていた大学3年生の時、仕事でも通用するイラストレーションと英語を身に着けようと決心し大学卒業後に渡米。サンフランシスコの美術大学「アカデミー・オブ・アート・ユニバーシティー」にてイラストレーションを学ぶ。

 帰国後は、第一線で活躍するイラストレーターの木内達朗氏に師事し、東京を拠点に約20年間活動。本の装画や雑誌の表紙のイラストを手掛けるなど、活動は多岐にわたる。

 最近では、イラストを担当した2018年出版の「かがやけいのち!みらいちゃん」(岩崎書店)が日本動物愛護協会の推薦図書に認定された。

 画材は主に油彩で、光と影のバランスを調整しながら、軽やかで色彩豊かに表現することを得意とする。「グッとくる絵」をコンセプトに風景や人物などを描く。

 2015年『ヒロミチイト・後藤美月が描く、イラストレーションってなんなん?!』展を四日市市文化会館にて開催、四日市の文化情報誌のイラストを担当したりと、地元に関係する仕事もこなしてきた。

 現在、小説新潮で連載中の伊吹有喜さん(四日市市出身)の「灯りの島」の挿絵を担当している。

細部まで表現

 桃山さんは東京都出身で、幼い頃から昆虫が大好き。チョウやガの幼虫「イモムシ」の美しい模様に魅了され、点描で幼虫を作画するようになった。「虫の日」に合わせて昨年6月4日に出版した作品集「わたしはイモムシ」(工作舎)が今年、世界的広告賞「第101回ニューヨークADC賞」のイラストレーション部門でブロンズ賞を受賞。「イモムシ画家」として脚光を浴びるようになった。

桃山さん「イモムシ」でメディア出演

 市内で採集したモンシロチョウやナミアゲハ、ウラギンシジミを観察し、ふ化や蛹化、羽化の様子を描いた絵本「へんしんーすがたをかえるイモムシ」(2022年、福音館書店)は4月の刊行から既に3刷となるなど好評。顕微鏡や拡大鏡を使って実際の幼虫を細部まで表現した絵は繊細で、本を手に取った人が絵を触って感触を確かめることがあるほどだ。

 出版を記念し、東京や京都、静岡で原画展を開催。メディアの取材では素顔を出さず、自作した国蝶「オオムラサキ」の幼虫を模した面をかぶって対応する。「わたしはイモムシ」に「へんしん」というスタンスだ。

 飼育観察しながら作画する独自の制作スタイルで、イモムシのフンから抽出した色素で紙を染めて使うことも。来春には、同市松本の児童書専門店「メリーゴーランド」で絵本「へんしん」の原画展、同時期に支店の「メリーゴーランド京都」にて個展を開催する予定だ。

「サビちゃん」が愛嬌

 2人は共通の師である木内氏を通じて知り合い、交際を始め、2020年1月に椿大神社で挙式した。コロナ禍をきっかけに、ウェブ上で打ち合わせなどが済むことも多くなり、仕事のスタイルが変化。場所を選ばず十分に活動できることから、2020年4月に伊藤さんの地元の四日市へ引っ越した。

 自宅兼アトリエにはそれぞれの制作スペースがあり、愛猫の「サビちゃん」が愛嬌を振りまく中、机をならべ制作に励む。飼育するイモムシたちもケースの中で、愛情いっぱいに成長する。

 桃山さんは「四日市には自然が多く、虫たちがたくさんいてうれしい」、伊藤さんは「地元に戻り、少年時代を過ごした自然の美しさや人々のやさしさを改めて実感した。これからは地元に貢献できる活動がしたいです」とそれぞれ話す。仕事の合間は、夫婦でイモムシの様子を温かいまなざしで見つめていた。

※2022年11月5日(213号)発行 紙面から