造船一筋にかける思い 四日市市の鈴木造船

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【進水式を終え、引き渡しへの準備が進む船と鈴木社長=四日市市富双】

 四日市市で1907(明治40)年の創業以来、116年に渡って船の建造や修理をしてきた同市富双の鈴木造船。造船業一筋で、これまでに約650隻を大海原へと送り出してきた。

 創業当時は木船を建造していたが、現在は鋼材やステンレス鋼、アルミ軽合金などの材質で、5㌧から約1千㌧までの船を主に手掛けている。中でも化学薬品などを運ぶケミカルタンカーや石油などを運ぶオイルタンカー、アルミ製の高速船の建造が得意で、長い歴史に裏打ちされた技術力を駆使して全国の運送会社や自治体などに高品質な船舶を提供している。地元の四日市港管理組合の巡視船「ゆりかもめ」も同社が手掛けた。

作業員が行き交う作業場

 設計は船の一生を決めると言われ、大きさや速力などの基本的な設計に加え、積み荷の種類に応じて機関の配置や配管を決めるといった詳細な設計が必要となる。大手を除くと設計業務を外部へ委託する造船会社が多い中、同社は現場や顧客との密な関係を重視して社内に設計専門の部署を設置しており、現在は11人がCADソフトを使って業務に励んでいる。

 また、船は船員にとって業務遂行の場であるとともに、居住空間でもある。顧客のニーズに応じて設計から製造まで一貫生産される同社の船は、「振動が少ない」「快適に過ごせる」と高い評価を得ている。

国道23号線から見える建物

 「鈴木造船」の大きな文字が付いた建物を、国道23号線から見たことがある人は多いはず。海に面した同社の3千平方メートルの敷地内では多くの作業員が行き交い、巨大クレーンや溶接機などを使いながら業務に汗を流す。

 船の新造は年間5隻ほどで、他に修理を年間100隻ほど手掛けている。1千㌧規模のドックを有する造船所は太平洋沿岸では珍しく、国内を航行中の船が修理のため寄港することもあるそうだ。

 造船業界は、中小事業者が年々減少しているが、バブル期に造られた船の代替で需要は増加しているという。一方、熟練技術を持つ職人の高齢化が同社にとっても課題となっている。今年のスローガンに「人と船を創る」を掲げ、次世代の育成に力を入れている。

 同社が新たに注力しているのは、洋上風力発電施設向けの作業員輸送船(CTV)だ。洋上施設の建造や維持管理に従事する作業員などを輸送する小型の高速船舶のことで、国が施設数の拡大を推進する一方、作業船の数が足りず、建造が急務となっている。国土交通省は船の建造促進に向けたガイドラインも示しており、同社は三重大と連携して開発を進めていく。

 同社の鈴木幸志郎社長は「若い世代に技術を継承し、品質と快適性を提供したい。『次もまた鈴木造船に』と言って頂ける企業でありたい」と熱く語った。