つかめ金メダルの夢、女子レスリング藤波朱理さんパリ五輪へ

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【昨年11月に二十歳になり、テレビの収録を兼ねて晴れ着の前撮りをした藤波朱理さん。パリ五輪での金メダル獲得をめざす(写真はメ~テレ提供)】

 三重県四日市市出身の女子レスリング選手、藤波朱理さん(20)が、今年、パリ五輪に出場する。あの吉田沙保里さんの連勝記録を塗り替え、周囲の期待も大きくなるばかりだが、「それもエネルギーになります」と闘志を燃やす。子どものころから見てきた夢、「五輪で金メダル」まであとわずかだ。

 2度目の世界選手権優勝を勝ち取った昨年9月、パリ五輪の代表内定を決めた。10月のアジア大会でも優勝。連勝記録は吉田沙保里さんの119を超え、130にまで伸ばしている。

 「オリンピックの代表権を得て、目標に向けてスタートラインに立てました。ずっと胸にしてきた夢に近づいて、再び、やる気や緊張感が高まっています」。静かな口調だが、朱理さんは目標を見据えている。

 1988年ソウル五輪の代表候補だった父俊一さん(59)、世界選手権メダリストの兄勇飛さん(27)の影響もあって、朱理さんは4歳でレスリングを始めたという。四日市市立西朝明中学1年の時、ジュニアクイーンズカップで優勝。3年の時には世界カデット選手権でも優勝した。

 父がレスリング部監督を務める三重県立いなべ総合学園高校へ進学すると、1年でインターハイ優勝、2年で全日本レスリング選手権大会に初出場で優勝。3年では全日本選抜選手権で元世界チャンピオン奥野春菜さんなどを破って優勝し、世界選手権でも優勝した。破竹の進撃だ。

 「五輪で金メダル」の夢は、朱理さんの中では「中学生のころには確かなものになっていた」という。父の俊一さんも、中学から高校へと強さを増す姿に、「世界で戦える」と確信した。その瞬間には自分もリングサイドにいたいと思い、ナショナルコーチの研修を受けて合格。高校教師では全国に2人ほどしかいない難関だった。指導力を買われ、日本体育大学の女子コーチになると、朱理さんも同大に入学し。二人で「パリで金」をめざしている。

 なぜ、朱理さんは強いのか。テレビの取材などで、吉田沙保里さんはスピードと手足(リーチ)の長さを挙げている。朱理さんの身長は約164センチ。吉田沙保里さんは約156センチ。朱理さんは手足が長く、これに、相手の足をとるのに0.1秒ともいわれるスピードが加わり、世界最強の攻撃力が生まれるという。

 朱理さんの生まれ育った地元では、自治会や同級生などが、夏に向けての応援の相談を始めている。東京から戻ると、朱理さんは「たくさんの人に応援してもらっているんだな」と、いつも元気をもらえるという。

 昨年11月には二十歳になり、暮れには日本スポーツ賞の奨励賞にも選ばれた朱理さん。今年は東京での練習を中心に、最低1回は世界レベルの大会に出て試合感覚を磨いていくという。春には父と暮らす東京へ母千夏さん(55)も来てくれるといい、いっそう練習に集中できそうだ。

パリ五輪出場を決め、昨年、四日市市長に報告した藤波朱理さん。うれしい報告をもう一度!