イラストレーター・造形作家のいわさき智沙さんが、陶と石塑粘土で紡ぐ独特の世界――。ほんの少し肩の力が抜けた動物たちのうつわや、じっとこちらを見つめてくる陶人形「パジャミちゃん」。愛らしさと同時にどこか切なさを含んだ静かな訴えかけに気付いたら、目が離せなくなりそう。
三重県四日市市安島の山画廊で開催中の個展「ごきげんな夜 うつわと立体展」では、「ごきげんな仲間たち」がギャラリーの空間を「ゆるーく」彩っている。展示は6月1日(日)まで(月・火曜休廊/最終日は16時まで)。
陶芸で広がった作品の幅
いわさきさんはイラストレーター・造形作家として活動を続けながら、2021年に横浜から三重に移住。萬古陶磁器工業協同組合が開催する陶磁器研修「やきものたまご創生塾」で陶芸を学んだ。持ち味の日常の仕草やまなざしをかわいらしく無骨に立ち上げる作風を、実用的なうつわなどで表現することが可能になり、作品の幅が広がったという。「鉢の中の魚を狙うネコなど、実際に水を入れて楽しめるのは陶器作品ならでは」。お酒を入れると、ネコがお風呂に入っているような「ほろ酔い猫」シリーズのぐい呑みは、ネコがくつろぐうつわでお酒をたしなめる作品だ。

【「ほろ酔い猫」ぐい呑み】
静かな存在感「パジャミちゃん」シリーズ
2020年、コロナ禍中に誕生し、SNSで好評を得た「パジャミちゃん」シリーズは、ただかわいいだけではなく、見る者の心にふと入り込むような静かな存在感を放つ。服を頭まで被った独特のスタイル、何を考えているのか読み取れないけれど、そこはかともなく何かを訴えかけてくる視線……。「実は、私がパジャマのスウェットを被っていたら、夫がおもしろいと反応してくれて」。カメラマンの夫・岩崎竜太さんの協力で、立体作品と写真が響き合う物語世界を創造している。
2023年から2年間、NHKラジオ英会話テキスト「小学生の基礎英語」で、パジャミちゃんの弟のようなキャラクター、「ぱじゃまる」を生み出し、絵童話「ぱじゃまる眠れぬ夜の旅」と「ぱじゃまる眠れぬ夜の空」を連載した。造形のみならず、眠れない夜を過ごしたり、冒険の旅に出かけたりする物語もいわさきさんの創作だ。

【「ぱじゃまる」の世界】
「ごきげんな夜」訪問した人の声
兵庫県西宮市から、いわさきさんとキャラクターたちに会いに来たという女性は、「何かたくらんでる表情がかわいいですね。『寂しそうで、実はそうでもない』みたいな世界観が魅力」と熱心に鑑賞していた。いわさきさんは、「展示を見て『ふふっ』と笑ってくれたらいいな、と思います」と話している。会期中、毎日午後から在廊している。

【作品に見入る来場者】
◆展示情報
いわさき智沙「ごきげんな夜」うつわと立体展
会期 2025年5月22日(木)〜6月1日(日)
時間 午前10時〜午後6時(最終日は4時まで)
休廊 5月26日(月)・27日(火)
会場 山画廊(三重県四日市市安島1-6-13ポポロビル2階)
電話 059・351・0773