介護や老いは後ろ向きなものではなく、共に楽しみ、新たな価値観を生み出せるものなのではないか――そんな発想から始まった三重県文化会館の企画、劇団「老いのプレーパーク」。老いと介護のこれからの姿を、演劇で探る取り組みだ。三重県内のシニア世代や介護関係者23人の「三重メンバー」を軸に2018年から活動を続けてきた。
あさけプラザで2本立て公演
今年度は三重県文化会館と四日市市文化会館の共催。四日市地域総合会館あさけプラザ(四日市市下之宮町)で、3月14日(土)と15日(日)に2本立て公演を行う。「老人ハイスクール」では老人ホームを舞台にした青春群像劇を、「いざゆかん」では息子夫婦との同居をきっかけに展開する在宅冒険活劇を描く。
昨年10月のオーディションで選ばれた20代から80代の四日市メンバー15人が加わり、新たな顔ぶれで舞台づくりが進んでいる。稽古場では出演者たちの笑い声と真剣な表情が交錯し、本番への期待が高まっていた。
老いを楽しむ舞台づくり
四日市メンバーの中で最年長の島田雅子さん(81)は、今回初めて演劇に挑戦する。3年前までケアマネジャーとして介護の現場に立ち、現在も介護予防のサロンで活動を続けるなど、多忙な日々を送る。「年を重ねてから新しいことに挑戦するのは勇気がいるが、やってみると、今の自分がどこまで動けるのか、どんな力がまだ残っているのかが分かる」。
演じるのは、「実の娘のことを忘れてしまった認知症のミワコさん」役。「稽古では、声を大きくと言われれば動きを忘れ、動きに気を取られるとせりふを忘れてしまう。人に何かを伝えるのは本当に難しい。でも、楽しいです」とほほ笑む。「見てくださる人が、自分の可能性を見つけるきっかけになればうれしい」。

同じく四日市メンバーの一人、稲葉佳代子さん(66)も、今回が演劇初挑戦だ。販売職を定年で退いた後、「少しゆっくりしよう」と休んでいるうちに6年が過ぎた。「母が私と同じ年齢の頃に仕事を辞めて、だんだん物忘れが増えていったことを思い出し、何かしないと、という気持ちが強くなっていきました」。家族との会話も減り、自宅にこもりがちになっていたという。そんなとき、募集チラシが目に留まった。
配役は、「がり勉のカワブチさん」。学生時代の気持ちに戻るような感覚で、自然体で演じられたらと話す。「共演者のみなさんが本当にパワフルで圧倒されるけど、見習いたい」。最近では、ドラマを見る目も変わった。「俳優さんってすごいな、と演技に目がいくようになりました」。

「高齢者ほど、いい俳優はいない」
稽古を見守る演出の菅原直樹さんは、自身が俳優であり介護福祉士でもある。「老いと演劇」をテーマに岡山県を拠点に活動する劇団OiBokkeShiの主宰として、高齢者や介護職とともに舞台をつくり、認知症ケアの現場にも演劇的手法を取り入れてきた。
「最初は皆さん緊張して硬かったが、回を重ねるごとに打ち解けて、空気が柔らかくなってきました」と手応えを語る。
「高齢者ほど、いい俳優はいないと常々思っています。これまでの人生で、いろいろな役を経験している。経験がそのまま役者としてのスキルになっているんです」。高齢者を「支えられる立場」としてでなく、「表現する主体」として捉える。

また、菅原さんは「介護職の人も、みんな俳優になったらいい」と語る。介護の現場で、認知症の人が見ている「世界」を否定せず、その人の「物語」に演者として寄り添ってみる。思い込みや間違いを無理に正さず受け入れることで、双方に穏やかな時間が生まれるという実感がある。
この日の稽古の終わり、菅原さんはメンバーに、「全体の空気感はだいぶできてきました。この調子で役をつくっていきましょう」と声をかけた。舞台づくりは、仕上げの段階に入っている。

今回の舞台には、四日市市文化会館主催事業「みはまワークショップ」ダンス部門ディレクターを務める三輪亜希子さんの振付・指導によるダンスシーンも盛り込まれている。出演者一人ひとりの個性を生かし、それぞれが自然体で輝く構成だ。人は何かを失っても、なお輝くことができる――。そんなメッセージが込められているという。
OiBokkeShi×四日市市文化会館×三重県文化会館 老いのプレーパーク出張演劇公演in四日市「老人ハイスクール」「いざゆかん」は、3月14日(土)・15日(日)の両日午後2時開演。料金は1000円(22歳以下500円)。超高齢社会をどう生きるか。そのヒントが舞台から届けられる。
チケット取り扱い
■三重県文化会館(津市)
電話(059-233-1122)
WEBチケットサービス「エムズネット」(https://p-ticket.jp/center-mie/)、三重県文化会館仮設チケットカウンター
■四日市市文化会館
電話(059-354-4501)、
「よんぶんネット」(https://yonbun.com/ticket-purchase/)、四日市市文化会館仮事務所(三浜文化会館内)
詳細は公式サイト(https://www.center-mie.or.jp/oibokenbun/)









