GW海外旅行で麻しんリスク急増 四日市市が注意喚起 ワクチン2回でも油断禁物

診察室で取材に応じる西森医師



 ゴールデンウィーク(GW)に海外旅行へ出かける人が増える中、世界各地で麻しん(はしか)が流行している。厚生労働省によると、麻しんは感染力が極めて強く、一般的なウイルス感染症と比べても致死率が高い。

 日本でも2024年から患者数が増え始め、今年は4月時点で299例と、2019年の大流行に次ぐペースで再拡大している。

 4月中旬には鈴鹿市で、海外渡航歴のある20代男性の感染が確認された。GWで人の移動が増えるこの時期、四日市市も注意を呼び掛けている。貝沼内科小児科(四日市市泊山崎町)の西森久史医師に、麻しんの特徴とワクチン接種について聞いた。

なぜ麻しんは“怖い病気”なのか

 新型コロナウイルスは感染しても発症しない人が一定数いるが、麻しんは免疫がない人が感染すると90%以上が発症するとされる。肺炎や脳炎などの重い合併症を引き起こすことがあり、先進国でも1000人に1人が死亡するとされる。こうした理由から、国内で1例でも発生すれば報道される。

 麻しんの感染力は非常に強く、免疫のない集団では1人から12〜18人に感染が広がる可能性があるとされる。これはインフルエンザや新型コロナと比べても高い水準にある。

 麻しんウイルスは、咳やくしゃみの飛沫だけでなく、空気中に漂う微粒子を吸い込むだけで感染する。マスクや手洗い、アルコール消毒は補助的な効果はあるが、完全には防げない。そのため、帰国者が感染した場合には、利用した公共交通機関などが公表されることもある。

 感染すると、約10日後に発熱や咳、鼻水、目の充血など風邪に似た症状が出て、数日後に39度以上の高熱と発しんが現れる。日本では麻しん患者が少ないため、診察経験のある医師も多くはない。検査結果もすぐには出ず、発症前から他者に感染させるため、注意が必要だ。本人が軽症でも、妊婦や乳幼児など免疫力の弱い人に感染すると重症化する恐れがある。

ワクチンは2回接種が基本

 日本では麻しんワクチンが導入されているが、2006年までは1回接種だった。1回では十分な免疫がつかない人が一定割合いるため、現在は2回接種が標準となっている。2008〜2012年には、1回接種世代を対象に追加接種が行われた。接種回数は母子手帳で確認できる。

 母子手帳が見つからない場合や、50代以上で「子どもの頃にかかったはずだが記憶が曖昧」という人は、抗体検査で免疫の有無を確認できる。抗体が不十分であれば、追加接種を受ける人が多い。

 長期、短期に関わらず流行地に渡航の予定のある人は、抗体検査をせずに直接ワクチンを接種するケースもある。海外からの帰国者の感染が目立つため、西森医師は「麻しんの流行している国に渡航予定のある人にはワクチン接種を勧めている」と話す。

2回接種しても発症するのはなぜか

 ワクチンを2回接種しても、完全に防げるわけではない。実際に、鈴鹿市の感染者も2回ワクチンを接種していた。その背景には「ブースター」と呼ばれる免疫の仕組みがある。

 ワクチンや自然感染で免疫ができても、その後にウイルスへ軽く接触することで免疫が再び刺激され、抗体が増える。これがブースター(追加免疫効果)だ。ブースターが起こると免疫が長く維持され、発症しにくくなる。

 しかし日本では2000年代以降、麻しんの発症が激減し、国内でウイルスに触れる機会がほとんどなくなった。さらに新型コロナの流行で手洗い・マスク・消毒が徹底され、ウイルス曝露そのものが大幅に減った。その結果、免疫記憶は残っていても刺激されず、ブースターが起こりにくい状態になっている。

 免疫は使われないと少しずつ弱まり、抗体もゆっくり低下する。そのため、2回接種していても強いウイルス曝露を受けると発症する人が現れるという。西森医師は「ワクチンを接種していれば重症化は防げる。周囲への感染を広げるリスクも減らせる」と強調する。

貝沼内科の予防接種・検診棟
貝沼内科の予防接種・検診棟

 MRワクチン(麻疹・風疹混合)は、就学までは定期接種で無料、学童以上は有料になる。西森医師は「2回接種した自信がない人や、抗体検査を希望する人は、医療機関で相談をしてください」と話した。

GWに注意すべきこと 海外旅行者は特に重要

 四日市市が注意喚起を行う背景には、海外での麻しん流行と、GWの海外渡航者増加がある。海外で発熱や発疹が出た場合は、帰国前に医療機関へ相談し、帰国後に症状が出た際は、院内感染防止のため受診前に電話連絡をする。

 西森医師は「過度に心配する必要はないが、GW中に海外へ行った人、人混みに長時間いた人は、体調に異変を感じたら医療機関を受診してほしい」と呼び掛けている。

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