近年、四日市市内の書店が次々と閉店する中、9月7日には県内最大級のフロアを誇った宮脇書店四日市本店(同市安島・トナリエ4階)が幕を下ろした。電子書籍やネット通販の普及、SNSやショート動画が浸透する現代社会の中で、街の書店で偶然の一冊に出会う機会が、この地域からも失われつつある。
全国で10年間で約4200店減少
日本出版インフラセンターの調査によると、全国の書店数は今年3月現在が1万417店舗で、10年前と比べて約4200店舗減少した。四日市市内では2023年3月の「TSUTAYA四日市店」(芝田)の閉店が記憶に新しく、その前後も「プラスゲオ テラ四日市店」(野田)と「未来屋書店四日市尾平店」(尾平)が姿を消した。

【宮脇書店があったトナリエの外観】
閉店を惜しむ声も
宮脇書店四日市本店は、話題の新刊や文芸書、文庫のほか、参考書や児童書も充実しており、宅建など資格試験対策本や専門書も多く扱っていた。地域住民にとって「何でも揃う店」として長年親しまれてきた。
利用してきた市内在住のデザイナーの女性(46)は「本を探している時、ほかの店になくても宮脇書店に行けば見つかることが多かったので、残念。専門書は現物を見てから買いたいので、今後はどこで買うか迷う」と語る。一方、市内在住の男子学生(21)は「電子書籍とマンガアプリでしか読まないので、本屋には何年も行ってない」と話した。

【閉店した書店と営業を続ける書店】
イオンタウン四日市泊店では
かつて同市泊小柳町にあった「パワーシティ四日市」内にも宮脇書店があったが、イオンタウンへの改装に伴い閉店。その後は子ども向けの遊具を備えた書店がオープンし、子育て世代には利用しやすくなったが、専門書や参考書は少ない。イオンモールに入る大型書店もマンガや新刊雑誌が中心で、専門書の需要を十分に満たしていないとの声がある。

【スターバックスコーヒーを併設するTUTAYAいまじん白楊鈴鹿中央通り店の外観】
鈴鹿市では滞在型の読書体験ができる大型書店が人気
隣接する鈴鹿市では、スターバックスコーヒーを併設した「TSUTAYA いまじん白揚鈴鹿中央通店」が人気だ。雑貨販売やカフェを通じて滞在型の読書体験を提供し、幅広い世代から支持を得ている。四日市市の書店事情との違いが際立つ状況だ。
地域住民が「偶然の一冊」と出会える場を失わないためにも、市内の書店にも新たな取り組みが期待される。