芸術的ソフトクリームがSNSで大バズり 81歳と84歳が切り盛り「しんちゃんのお店」 四日市・塩浜

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芸術的なソフトクリームを手にする看板娘の服部さん(84歳)=四日市市塩浜
【芸術的な形のソフトクリームを提供する看板娘の服部さん=四日市市塩浜で】

 三重県四日市市塩浜に、中古コンテナを改装した「しんちゃんのお店」がある。看板には「たこ焼き」「天理スタ麺」「ソフトクリーム」「ビール」などのメニューの他、凛々しい店主の顔とタコのイラストが添えられている。店内は4人掛けのテーブルが1つだけだが、週末になると客が途切れない。

中古コンテナを改装した「しんちゃんのお店」前で並ぶ店主の新井さん(しんちゃん)と服部さん
コンテナを改装した店前に立つ、「しんちゃん」こと新井元治さん(左)と服部正子さん

小さな店になぜ?全国から客

 店を切り盛りするのは、「しんちゃん」こと81歳の店主・新井元治さんと、パートで84歳の看板娘・服部正子さんだ。2人の人柄に引き寄せられ、訪れた見知らぬ客同士が自然に会話を交わす。取材時には、動画で店を知って、たこ焼きとソフトクリームを目当てに滋賀県大津市から2時間かけて男性が訪れていた。店内にある客の書き込みノートには、九州や海外からの記録も残り、遠方からの「わざわざ客」も少なくない。

少し固めのクリームを独特の盛り方でコーンに載せる服部さんのソフトクリーム作りの様子
ソフトクリームを作る服部さん。ソフトクリームがコーンからはみ出す

「服部さんにしかできない」ソフトクリーム

 人気の理由の1つは、服部さんのソフトクリームにある。SNSやテレビで「芸術的」と話題を呼んだその一品は、少し固めのクリームがコーンからはみ出して落下しそうになりながら盛り上がる独特の形だ。盛り付けの様子を生で見ようと訪れる人が絶えず、誰もが「服部さんにしかできない」と称賛する。

 落ちそうで落ちない様子を動画に収めるのが定番になっており、インスタグラムでは、バズって2500万回以上再生されたショート動画もある。ところが、しんちゃんも服部さんも、SNSでの拡散については、いまいちよく分かっていないようだ。

ラムネ味の芸術的ソフトクリームを手に興味深げな滋賀県大津市から訪れた男性客
ラムネ味のソフトクリームを持つ滋賀県大津市から訪れた男性

 服部さんは服飾学校出身で、理容師と調理師の免許を持つ。若い頃から調理師として働き続けてきた経験を生かし、たこ焼きや天理スタ麺など店のメニューを一手に担い、全面的にしんちゃんを支えている。

しんちゃんこだわりの「踊るたこ焼き」も

 たこ焼きにもこだわりがある。70歳まで土建業を営んでいたというしんちゃんは、2016年のオープン前に有名店を食べ歩いて研究を重ねた。「冷凍だと味が落ちる」と考え、鳥羽市沖の菅島で仕入れた新鮮な生ダコを店でさばき、大きめに切って使用する。1皿650円で、季節のフルーツが添えられることもある。開店当初に導入した自動たこ焼き機は、スイッチひとつで生地が回転し、しんちゃんはそれを「踊るたこ焼き」と呼ぶ。

新鮮な生ダコを使った大ぶりのたこ焼き、四日市・塩浜「しんちゃんのお店」名物
しんちゃんのたこ焼き。大き目で食べ応えがある
自動たこ焼き機で焼き上げた「踊るたこ焼き」を皿に盛り付ける服部さん
「踊るたこ焼き」を盛り付ける服部さん
地域ローカルから全国放送まで

 開店から10年目に突入した「しんちゃんのお店」は、これまでに中京テレビ「PS純金」、日本テレビ「月曜から夜ふかし」、テレビ朝日「ナニコレ珍百景」など多くの番組で紹介されてきた。名古屋からのバスツアーの行程に組み込まれたこともあるという。

 今年8月30日、31日には、日本テレビ系列「24時間テレビ」の募金会場(四日市市・朝日ガスエナジー本社)に出店し、猛暑の中で200個のソフトクリームを提供した。

四日市の24時間テレビ募金会場に出店した「しんちゃんのお店」の屋台風ブース(提供写真)
24時間テレビの募金会場に出店した「しんちゃんのお店」(しんちゃん提供)
世代と地域をつなぐ交流の場

 テーブルを囲めば、知らない者同士が自然に会話を交わす。話し好きのしんちゃんはにこやかに言う。

 「あらゆる世代や地域のお客さんが来てくれて、おしゃべりするのが楽しい。小さな子がタブレットを持って『動画で見た』って親に連れてきてもらうこともあって、本当にうれしい」

 「しんちゃんのお店」には、人と人とがつながる温かな時間が流れ、駄菓子屋に立ち寄った放課後や、夏休みに遊びに行った田舎の祖父母の家のような懐かしさがある。しんちゃんと服部さんの笑顔と会話が、ここだけの空気を生み出している。

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