今年は9月に開催 鳥出神社の鯨船行事 熱中症リスクを避ける

【猛暑の中汗をかきながら鯨船の乗り手を務める子ども】

 ユネスコ無形文化遺産で、250年近い歴史がある四日市市富田地区の「鳥出神社の鯨船行事」が、今年は日程を変更し、9月27(土)、28(日)に開催される。毎年8月14、15日に開催され、お盆の風物詩として親しまれてきたが、夏の暑さが厳しく、見物客を含めた熱中症対策として変更を決めたという。

昨年の鳥出神社での本練りの様子

伝統よりも命を守る
 昨年の行事の終了後に、富田鯨船保存会連合会で開催時期の変更を検討した。環境省・文部科学省が作成した「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」によると、暑さ指数(WBGT)が33以上の場合、屋外での運動は原則禁止とされている。お盆の時期は暑さ指数33以上になることが多く、命は守れないと判断した。

日に焼けながら鯨を被る演技をした人

9月のガニ祭りで奉納
 明治期には鳥出神社の例祭である9月23日の「ガニ祭り(蟹祭、神祭)」に鯨船行事が行われていたという記録もあり、ガニ祭りの奉納行事として、今年は直近の土日である9 月27、28 日に日程変更することになった。

毎年お盆に開催
 最近は8月14日に町練り、15日には鳥出神社への練り込み(本練り)が行われてきた。しかし、猛暑の影響で参加者が体調を崩すことが増え、この時期の開催を危ぶむ声が関係者から上がっていた。お盆に開催することで、結婚や就職で独立した子ども世帯が帰省して行事に参加し、担い手不足を補っていた面もあった。そのため、日程変更は、賛否両論があったという。

行事の経験者は
 結婚して地元を離れるまで、20年以上鯨船行事に参加していた四日市市在住の50代の男性は、「昔から暑かったが、今の暑さは危険。時代に合わせて変化しないと、鯨船行事の存続が難しいと思う」と話した。

鳥出神社の鯨船とは
 「鳥出神社の鯨船行事」は、1997年に国の重要無形民俗文化財に指定され、2016年に全国33件の「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録された。4つの組からそれぞれ1艘ずつの鯨船山車を出し、張りぼての鯨を追いかけ、仕留めるという一連の演技を繰り返し行う。今年の8月14、15日は鳥出神社では鯨船行事の奉納は行われないが、例年通り14 日は鎮火祭、15日は例祭を開催する。また、毎年お盆に開催される富田地区の石取り祭りは、夜間開催のため、熱中症リスクは低く、例年通り実施する予定となっている。

張りぼての鯨を背負い演技する人

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