それでもサッカーがしたい――挫折と希望の先にドバイでプロデビュー 向満希選手トークショー

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【トークショーで質問に答える向選手(右)】


 13歳で単身ドバイに渡り、サッカー留学を経てプロ選手となった三重県四日市市出身の向満希人さん(20)を迎えたトークショーが、20日(日)に四日市市室山町の四日市キリスト教会で開催された。言葉の壁、文化の壁、自分自身の壁を乗り越え、夢を実現したその軌跡は、会場に集まった子どもたちの心にまっすぐ届き、希望と勇気を届けた。

【ボールリフティングしながら入場する向選手】


●トークショーは温かい縁から生まれた
 トークショーは、同教会の「アットホーム英会話教室」(四日市市室山町)が主催して開かれた。向選手が小さい子どものころに通っていた縁がある。教室代表のウィリアムズゆりさんと、サッカーコーチの伊藤大輔さんが聞き手を務め、小中学生のサッカー少年など約100人が向選手の話に耳を傾けた。



●向選手の軌跡
 サッカーを始めた幼少期から、国際大会にも出場する実力を見せていた向選手。欧州で活躍する香川真司選手に憧れ、「早く海外で挑戦したい」と13歳で単身ドバイへと旅立った。しかし、現実は甘くない。言葉の壁、文化の違い、孤独——16歳のときには監督から「このままではチームに残れない」と突きつけられ、打ちのめされて帰国。サッカーを辞める寸前まで追い込まれた。
 しかし、支えてくれる家族、初心を思い出させてくれた指導者の言葉に背中を押され、もう一度自分と向き合った。「それでも、サッカーがしたい」——その思いだけを頼りに、再びドバイへ。声をかけてくれたクラブ「フルサンヒスパニア」でチャンスを掴み、昨年、ついにプロデビューを果たした。

【ドバイでプレーする向選手】

「絶対負けない強い気持ちを」
 会場からたくさんの質問があがった。「海外の体の大きい選手とプレーする時、どんなことを意識するか」という質問に、「絶対負けないという気持ちを持つこと」と答えた。向選手のポジションはサイドバックで、守備と攻撃の両方に関わる非常に重要な役割を担う。守備の対人をすることが多く「常に目の前の相手に負けない」という気持ちがチーム全体のプレーを支えるという。
 「一番苦しかった時は」という質問には、「長い間思うような結果が出ず、16歳でボロボロになって帰国した時」と答えた。家族も「もうサッカー辞めるんだ」と思うほどの精神状態だったが、留学前の指導者や家族や友達の支えに力をもらい、自分と向き合い、頭の中を整理し、「サッカーがやりたい」という自分の正直な気持ちに気づいてドバイに戻ったという。

【参加者とナルトダンスをする向選手(左から3人目)】

「人生何回目?」
 「夢を実現できた理由は」という質問には「努力と犠牲を払うこと」と答えた。ドバイのジュニアチームでは努力は誰もがしている。しかし、夜更かしや菓子類、炭酸飲料などを我慢できない選手もいるという。向選手はシーズン中は全てを我慢、戦える体を維持した。けがをして練習できない時は焦りもあったが、監督やほかの選手を観察し、「治ったらプレーに生かそう」と考えたという。聞き手の伊藤さんから「人生何回目?」と突っ込まれるほど、まるで年輪を重ねたような、大人びた考え方に、会場も感嘆の空気に包まれた。

【来場者にサインする向選手】

「トークショーを支えてくれた人のおかげ」
 三滝小学校5年生の鈴木南翔さんは「自分がどうしたらいいか分からない時、周りの人に聞いて、自分を変えていったことがすごい」と話した。海星中学校1年生でサッカー部に所属する久原芽生さんは「色々辛いことを乗り越えて今があると分かった」と話した。
 向選手は事前に質問をもらい、回答を3週間ほど考えて臨んだそうで、「無事トークショーができ、ほっとした。今まで出会ってきた人達、そばで支えてくれる人達、主催のゆりさんや聞き手の伊藤さん、裏方として支えてくれた人、そして一番は来てくださった人のおかげ。子どもたちの純粋でキラキラした目に勇気をもらった」と話した。

【来場者との記念撮影】

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