乳牛の姿は既になし 売店は11月30日で終了
動物と触れ合い、美味しいソフトクリームを味わえる場所として子どもから大人まで親しまれてきた「四日市市ふれあい牧場」(三重県四日市市水沢町)が、静かに閉幕へ向けた準備を進めている。今年3月に乳牛の飼育は終了し、現在触れ合える動物はポニーとヤギ、エミューだけとなった。それぞれの引き取り先も決まりつつあり、今後の牧場の活用方法は未定という。

四日市市が1997年に乳牛の育成場所としてふれあい牧場を設立し、市の施設として運営してきた。2015年、有限会社四日市酪農が代表を務める「四日市酪農グループ」が指定管理者となり、市との協定に基づき、施設の維持管理や売店運営、ふれあい体験などを担ってきた。

体験は搾乳やバター作りを行い、売店では牛乳やヨーグルトを販売。中でもソフトクリームは世代を超えて愛され、子どもたちはウサギやモルモットなど飼育されている可愛い動物とのふれあいを楽しんできた。
特に年2回開催してきた「ふれあい牧場まつり」は、動物とのふれあい体験や乳製品の販売、地元団体の出店などで、大勢の家族連れで賑わった。コロナ禍で一時中止になったが、23年に再開。しかし、人員不足や体験事業の休止により、以前のような活気を取り戻すことは難しかった。

近年、酪農家の減少によりふれあい牧場での乳牛育成が不要となり、市は撤退を決断。今年3月には乳牛の飼育を終了し、現在その姿はない。ウサギやモルモットも里親を募り、引き取られた。
今なお飼育している動物はヤギ3頭、エミュー1羽、ポニー1頭。引き取りの準備が整い次第、新たな場所へと旅立つことになる。
売店は、11月30日で営業を終える。市によると、牧場の今後の活用については未定だという。
10月10日にYOU記者が牧場を訪れると、平日にもかかわらず親子連れの姿があった。1歳半の男の子を連れた30代の夫婦は「子どもが動物好きなので来たけど、牛がいなくて残念。でもヤギと触れ合えて、子どもが喜んでいた」と話した。

飼育員の福留七海さんは「動物と離れるのは寂しい。ポニーのあんずは人懐っこいので、新しい場所で可愛がってもらえると思う」と話した。

四日市在住の大川知美さん(36)は、子どもと一緒に何度も訪れたそう。「動物と触れ合えるだけでなく、芝生で遊んだり、美味しいソフトクリームを食べたりした。牧場から見える景色も好きだった。今までたくさんの方の思い出の場として活躍されたと思う」と感謝の思いを語った。