日本遺産の地・明和町×四日市の伝統手延べ麺 平安時代の斎王がテーマの新感覚ラーメン「斎麺」誕生

製麺所の製品の前で、「斎麺」を持つ南野マキさんと渡邉美千代さん。
【斎麺のパッケージを紹介する南野さん(左)と渡辺手延製麺所の女将・渡邉さん=四日市市川北1丁目】

 つややかで半透明、のど越しは「にゅるん」。ひと口すすれば、小麦の風味と素朴な塩味とわさびの香りが口の中に広がる――。三重県明和町発の「斎麺(さいめん)」は、新感覚のラーメン。伊勢神宮に仕えた斎王をテーマに、同町出身の乾麺専門家・南野マキさんがプロデュースし、四日市市の渡辺手延製麺所の手延べ技術を生かした麺が使用されている。

 斎麺は、乾麺の魅力を発信する「南野商店」(東京都世田谷区)代表の南野マキさんと、明和観光商社が共同開発した植物由来の麺料理。三重県の地産品を中心に採用し、平安時代の食文化をイメージした。

わさび菜やみょうが、カイワレ大根などをトッピングした斎麺
斎麺の調理例。わさび菜やみょうがなどのトッピングがお勧め=南野商店提供

四日市の老舗手延べ麺がラーメンの味わいに

 江戸時代から麺作りがさかんに行われてきた四日市市大矢知地区の老舗、渡辺手延製麺所(四日市市川北1丁目)は素麺やひやむぎ、うどんなどを1本1本手づくりで製造している。南野さんは同製麺所の麺を初めて口にした時、「小麦の味がしっかりしていて、透明感がありキラキラしている」という感想を抱き、「斎麺にふさわしい」と確信したという。

製麺所で干されている麺
手延べ麺の「ばち」部分=渡辺手延製麺所で

 斎麺には、「四日市ひやむぎ」の製造工程で生まれる「バチ麺」を採用。手延べ麺の両端部分を、形が三味線のばちに似ていることから「バチ」と呼ぶ。1日にとれる量が少ないため、「麺の希少部位」だ。幅のある部分から細くなるグラデーションの形状で歯応えがある。茹でる際、湯に添付の天然のかんすい100%の粉「中華めん風の素 YUDE-CO」を加えると中華麺に近い風味とコシが出るほか、小麦の成分とかんすいのアルカリ成分が反応し、麺自体が黄色っぽく変色。ひやむぎと中華そば風という2種類の麺を楽しめ、アレンジの幅が広がる。

「中華めん風の素 YUDE-CO」のパッケージと粉末が皿に盛られている。
「中華めん風の素YUDE-CO」=南野商店提供
黄色い中華風の麺と、白いひやむぎを一緒に盛り付けたどんぶり。
YUDE-COを入れて茹でた中華そば風の麺と入れずに茹でたひやむぎの合い盛り=南野商店提供
三重の恵みが溶け込む澄んだスープ

 スープは伊勢市神前海岸の「岩戸の塩」をベースに、三重県産のあおさを加えた透明な仕上げ。アクセントのえごま油とわさびオイルが表面に美しい模様を浮かべ、見た目にも印象的。えごまは平安時代にすでに精油されていたとされ、古くから日本人になじみ深い。隠し味に酢とブラックペッパー(胡椒は奈良時代に伝来)を入れることで、現代のラーメンの感覚にも近づけている。

斎麺のどんぶりを持つ手元とスープをレンゲですくっている右手
「岩戸の塩」と三重県産のあおさとを合わせた透きとおるスープ=南野商店提供
「伝統と現代が交わる一杯を届けたい」

 現在、南野商店で通販の取り扱いがあるほか、渡辺手延製麺所でも販売している。明和町の観光施設「いつき茶屋」では、1杯税込1100円で実食が可能だ。

 南野さんと同製麺所の女将・渡邉美千代さんは、四日市市内の飲食店での提供も目指している。「四日市ファクトリーカフェ」(四日市市下さざらい町)では、試食した担当者が「シンプルなわさび味が効いていて、無駄がないけど人間に大切なものが入っている印象を受けた。積極的に提供を検討したい」と話している。南野さんは、「斎麺は、現代の技術で伝統の味を斎王に献上するイメージのもと、丁寧に作られたラーメン。たくさんの人に味わってほしい」と笑顔で話した。

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