三重県四日市市磯津に伝わる伝統の鯨船「大正丸」が10月18日、塩浜地区を巡った。午前中は協賛企業などを対象に町練りを行い、午後からは塩浜地区市民センターで開かれた「塩浜地区文化祭」に登場。9月の祭礼だけにとどまらない、地域の中での鯨船の活動を見せた。
休止を経て2022年に復活
磯津の鯨船行事は、1920(大正9)年、豊漁などを願う磯津の氏神・塩崎神社の祭礼として始まったとされる。1995年に四日市市の無形民俗文化財に指定されたが、高齢化や人手不足などで中断を繰り返し、2001年を最後に休止。2020年から地域住民の有志による保存会が船の修繕を進め、2022年に21年ぶりの復活を果たした。
金箔の彫刻や朱の漆などの装飾が鮮やかな大正丸。鯨との攻防を表す演技は、北勢地方に伝わるほかの鯨船行事と共通する。毎年9月の祭礼行事では、磯津の町を練り歩き、張りぼての鯨を追う。

祭礼から1か月後、塩浜を巡る
祭礼から約1か月後の18日、大正丸は塩浜地区の協賛企業や店舗など6か所を巡った。
正午前、太鼓と「エージャーエージャー」という威勢の良い掛け声が響き渡る中、大正丸は塩浜駅近くの居酒屋「酒楽」店舗前に現れた。船体が上下に激しく動かされ、まるで荒波を進むかのような迫力ある動きだ。船上では踊り子がキレのある踊りを見せ、モリで鯨を仕留めると、周囲は歓声と拍手に包まれた。
こうした塩浜地区での町練りを可能にしているのが、船の運搬などで協力する塩浜運送だ。磯津を拠点とする大正丸が鈴鹿川を渡った先の塩浜地区を巡るには、同社の協力が欠かせない。
塩浜地区文化祭で熱演
午後は、塩浜地区市民センターの駐車場で同地区文化祭の出し物の最後を飾った。秋晴れの下、集まった大勢の地区住民の前でひときわ熱心な演技を披露。船体をダイナミックに傾ける名物の練りに会場は大盛り上がり。踊り子の凛とした舞や鯨役の力強い動きに、子どもからお年寄りまでが釘付けとなった。
【動画:https://youtu.be/m_FC5lkM_8w】
塩浜地区文化祭へは、同地区自治会からの誘いで、2023年から毎年参加している。磯津鯨船保存会の西野孝之会長は、復活以来、地道に活動していることで「地域の絆が深まったと感じる」と話す。協賛企業に勤める人が保存会メンバーとして活躍するなど、地域との強いつながりが活動を支えている。
子どもたちが受け継ぐ伝統
今回の参加者は子どもを含め約60~70人。船を動かすには少なくとも40人が必要だそうで、大人に混じって多くの子どもたちが奮闘していた。小中学生の参加は年々増えているという。
今年の踊り子は、塩浜小6年の吉川雄志さん、西野琥神さんと、同5年の松浦禮示さんの3人。吉川さんは踊り子を務めるのは昨年に続いて2回目で、「去年よりも今年はみんな気合が入っている。『エジャエジャ』のときの船の動きも激しい」と笑顔を見せた。2年前までは「櫓漕ぎ」を務めていた松浦さんは、「『エジャエジャ』のとき、体がフラフラしないようにしっかり力を入れている」、西野さんは「塩浜の大きなイベント。これからも盛り上げていきたい」と意気込みを語った。
2022年の復活から5年目。祭礼だけでなく、地域の催しにも参加することで、大正丸は活動の場を広げてきた。子どもたちの参加も増える中、伝統を次の世代へとつないでいる。
















