ユネスコ無形文化遺産で、250年近い歴史がある三重県四日市市富田地区の「鳥出神社の鯨船行事」。毎年8月14、15日に開催していたが、今年は熱中症対策のため、日程を変更し、9月27日の町練りで幕を開けた。各町の練りの様子を取材した。28日は鳥出神社で本練りが行われる。

中島組 四日市大学の学生が力を発揮
富田地区の四つの組が鯨船行事を行うが、中島組はその中で最も世帯数が少なく、46世帯しかない。中島組の人が富田地区以外の友人に声をかけたり、四日市大学の学生が授業の一環で協力し、担い手を補っている。同大総合政策学部に通う菰野町の浅野慎太朗さん(3年)は昨年も参加した。「昨年は暑くてしんどかったけど、楽しかったので今年も手を挙げた。今しかできない体験で、バイト行くより絶対に有意義だと思う」と語った。岩﨑大和さん(3年)は静岡県出身で「地元の祭りと違い、山車が船で珍しいと思った。貴重な体験ができた」と話した。中島組の人は「四日市大学の学生さんに助けてもらい、本当に助かる」と感謝を口にした。

北島組 秋開催で快適
鯨船行事は、3年くらい前から暑さ対策で秋にする案が出ていた。北島組は、一昨年天候が荒れ、15日の本練りが中止になったことがきっかけで、試験的に10月に町練りをやってみたところ、涼しく快適にできたという。北島組の人は「お盆の時期にやると、法被が汗で滲んでいたが、今年は着替えなくて良い。涼しい方が楽しめる」と話していた。
保存会の加藤会長は
お盆だと帰省して行事に参加する人がいるので、9月開催に不安の声もあった。富田鯨船保存会連合会の加藤正彦会長によると「祭りの担い手は意外と多く集まったが、沿道のギャラリーが少なかった。お盆開催だと平日になることも多いが、今年は土日なので、いつも来られない人が見に来てくれている」と語った。

古川町 姫鯨が彩る唯一の組
他の組は鯨船の山車と張りぼての鯨一頭で練りを行うが、古川町には、男性が担う鯨に加え、女の子が担う姫鯨がいる。高校1年の小林さくらさんは、小学生の頃から姫鯨を担当してきた。「他の組は姫鯨はいない。古川町だけ女の子も鯨が担当できて嬉しい。ピンクの衣装が可愛いのも魅力」と話した。船の横につく「腹」の役にも女性の姿が見られた。古川町の23歳の女性は「楽しいので、友達も誘った」と話し、富田地区以外の人も参加していた。

沿道の人は
沿道で撮影をしていた全日本写真連盟会員、四日市市の飛岡隆さん(74)は、「ほかの祭りに比べて、若い人が多いのが魅力」と語った。

明日は鳥出神社に奉納
9月28日(日)は鳥出神社に各組が奉納する「本練り」が行われる。午前9時半から北島組の神社丸、11時から中島組の神徳丸、午後2時から古川町の権現丸が奉納される予定。
また三重県四日市市富田地区公式ホームページで、鯨船の現在地が確認できる。キッチンカーの出店もある。