三重県四日市市日永の県立総合医療センターで、痛みの少ないお産「和痛分娩」を行うようになって1年になった。「無痛分娩」の呼び名でも知られ、陣痛の痛みを局所麻酔薬で軽減しながら進めるお産だ。産婦人科医、麻酔科医、助産師などがチームで対応し、母子の安全を第一に、産み方の選択肢を広げたという。
硬膜外麻酔と呼ばれる、脊椎を包む硬膜の外側のすき間(硬膜外腔)にカテーテルを挿入し、麻酔薬を注入して痛みの感覚をブロックする。妊婦さんの痛みへの不安をなくし、産後の回復をできるだけ早めたいという声に応えようと、2025年8月に導入した。
今年になって、日本麻酔科学会の用語集に「分娩時鎮痛」の呼び名が収録され、公式な学術用語として定義されたというが、痛みの少ないお産を望む歴史は古く、欧米では19世紀半ばから始まり、日本でも、歌人の与謝野晶子が1916(大正5)年に五男を出産した時、麻酔を使った日本で最初の無痛分娩を経験したとの記録があるそうだ。「避けられる痛みを避けずにいるのは無益な辛抱だ」と語ったともいわれる。
「無痛」と言っても、実際は一定のタイミングまで全く痛みがない訳ではないことから、医療センターでは「和痛」の呼称を使っている。2025年8月から2026年7月までの実績は、正常分娩203件のうち和痛分娩は42件で、約5人に1人の割合になっている。妊婦さんの身体の状況などに応じて、最もよいお産の仕方を勧めており、状況によっては避ける判断もするという。
産婦人科部長の河村卓弥医師は、麻酔の技術だけでなく、分娩の進行をどう判断し、母体、胎児の状態を管理する産婦人科医、麻酔科医、助産師が情報を共有して対応することが、和痛分娩では最も大切だと指摘している。
「帝王切開などに切り替えることが必要になれば、院内で速やかな対応ができるようにする。この1年、一例一例を丁寧に積み重ね、それぞれの立場で経験を積んできた。今後も安全性を最優先に、妊婦さんのご期待に沿えるように努めたい」と話す。
麻酔科長の庄村千恵子医師も「麻酔科医が妊婦さんおひとりずつの希望や合併症に対応し、専門的な視点から安全性やリスクについても説明します。安心して出産に臨める体制をつくっています」と話している。
医療センターは、妊娠22週から出生後7日未満までの期間に対する総合的な医療を提供できる地域周産期母子センターとして、NICU・MFICU(新生児集中治療室、母体・胎児集中治療室)を備えており、これらの施設環境を含めて地域のお産を支援したいという。
















