三重県四日市市北町の「東海道四日市宿資料館」が、5月31日で閉館する。2019年6月1日の開館から7年。東海道沿いの歴史や暮らしを伝えてきたが、その役割を終える。開館は毎週日曜で、残りは5月3日、10日、17日、24日、31日の5回となった。
約3200人が来館、無償貸与の建物に区切り
同館の所在地は、東海道43番目の宿場・四日市宿の中心部にあたり、東海道と浜往還・菰野道が交差する「辻」として人や物資が行き交った場所。地域の歴史を紹介する拠点として、地域団体と歴史研究グループ「綱の会」が結成した「東海道四日市宿創生協議会」が開設した。
長谷川博久館長(76)によると、4月末までの来館者数は3015人。5月末までには約3200人に達する見込みという。年間では約400~500人が訪れ、地域住民のほか、東海道を巡る歴史愛好家や県外客にも親しまれてきた。
閉館の理由は、建物所有者の意向によるもの。同館は、かつて耳鼻咽喉科医院だった「福生医院」の建物・敷地を、家主の福生吉裕さんの厚意により無償で借り受けて運営してきた。館側の負担は電気代や水道代など維持費のみで、長谷川館長は「固定資産税なども負担される中、持ち主の方には本当にありがたく貸していただいた」と感謝する。その一方で、「相続や今後の整理もあり、返却してほしいとのお話を受けた。やむを得ず閉館することになった」と説明する。

触れて学べる展示、子どもたちの学びの場にも
館内には、江戸時代の旅道具や生活用品、古文書、昭和期の民具など多彩な資料が並ぶ。一般的な博物館と違い、多くの資料に実際に触れることができるのが特徴で、来館者からは「本物が見られて、しかも触れられる場所は珍しい」と好評だった。
子どもたちの学びの場にもなってきた。毎年夏休みには、自由研究の題材として東海道を選んだ小学生らが来館し、展示を見たり、ボランティアから話を聞いたりしながら調べ学習に取り組んだという。

資料は学校や介護施設、他館へ継承
閉館に伴い、館内資料は地域で活用される形で引き継がれる。近隣の中部西小学校には、江戸時代の旅道具類、矢立やたばこ入れなどの携行品、氷冷蔵器や昭和期の手回し洗濯機など約30点を寄贈予定。児童の目に触れる場所に展示し、郷土学習に役立ててもらう考えだ。

また、昭和30年前後の生活道具やおもちゃは、回想法に取り組む地域の介護支援施設へ。高齢者が昔の暮らしを思い出すきっかけとして活用される。そのほかの資料も、同じく旧東海道沿いにある「うつべ町かど博物館」(同釆女町)などで展示活用できるよう、調整が進んでいる。

幅広い年代の語り部ボランティアが活躍
資料館を支えてきたのは、20代から80代まで幅広い世代の語り部ボランティアたちだ。最盛期には20人を超え、現在も約11人が活動を続ける。来館者への案内だけでなく、歴史や文化を学び合い、交流する場にもなっていた。
今春、ウクライナから来日した青年が立ち寄り、居合わせた来館者やボランティアが「頑張れ」「平和を願っている」と声をかけて見送ったという。取材時には、この出来事が印象に残ったこととして話題にのぼり、そこから「海外からのお客さんも多かったね」と会話が広がった。アメリカ、フランス、イギリスなど欧米からの来館者に片言の英語で応対したことや、県外では関東から関西まで各地の人々が訪れ、交流したことなど思い出話に花が咲いた。
また、ホームページ内ブログ「語り部のつぶやき」(https://ameblo.jp/toukaidou-yokkaichi/)は、小川裕子さん(67)が担当してきた。旧町名の由来を調べて現地を歩き、写真とともに紹介するなど、地域の歴史を身近に伝える内容を積み重ねてきた。館の歩みや地域資料を伝える記録として、閉館後もホームページ(https://toukaidou-yokkaichishuku.amebaownd.com/)とともに残す予定だ。
長谷川館長は「できれば施設ごと残したかったが、それはかなわなかった。資料は小学校や別の施設で、これからも活用されていく。来館者をはじめ、これまで資料館に親しんでくださった方々にも、その行き先を知っていただければ」と話し、「この建物の中で展示をご覧いただける最後の機会でもある。ぜひ足を運んでほしい」と来館を呼びかけた。
開館は日曜日の午前9時~午後4時(入館は午後3時半まで)。入場無料。
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