三重県四日市市のJR四日市駅前に新大学を設置する計画を知ってもらおうと、シンポジウムが6月27日、都ホテル四日市で開かれた。「地域の明日を創る新大学~地域が必要とする大学を目指して~」と題し、市や三重大学の構想や関連する国の計画などが説明された。パネルディスカッションでは企業の社員や高校生から大学の教育内容に対する注文も語られた。
会場の「伊勢の間」には300余席が用意され、県議、市議、自治体、大学、企業、自治会などの関係者も大勢参加した。森智広市長や三重大学の伊藤正明学長からの取組報告で、初めて、大学の名称として「四日市産業共創大学群(仮称)」が使われた。シンポジウムは四日市市と三重大学が共催し、四日市商工会議所が後援した。
「北勢は製造の重要地域。人材育てる大学は必要」
森市長は、北勢5市5町は三重県の製造品出荷額の約72%を占め、その金額約8兆8000億円は岐阜県全体の約6兆7000億円より大きい重要地域であると紹介。一方で、県内には工学系分野を学ことができる大学が三重大のみで、県内の大学生の約8割が県外に流出しており、その後の就職にも影響していると説明した。新大学は人材を求める地元企業にとっても必要なものだとの考えをあらためて強調した。
伊藤学長は、三重大の工学部には現在、半導体に関連する「電子情報工学」など6つの学科コース・専攻科があり、四日市に進出した場合には、企業や市民とともに地域の課題を解き、産業とまちの価値を創造する大学をめざすこと、四日市市が中心となる「四日市公立大学」と「三重大学四日市キャンパス」が互いに連携し、全国に例のない産業共創大学群をつくること、などの構想を説明した。


「四日市の新大学は国の戦略にも合う」
基調講演は経済産業省中部経済産業局産業部長の今野直明さん、文部科学省高等教育局専門教育課企画官の星幹崇さん、地域のものづくりと連携する大学開設を先行させている新潟県三条市経済部商工課長の今井智之さんの3人。今野さんはキオクシアを代表する半導体製造がある四日市が高市早苗総理の看板政策「地域未来戦略」に合致しており、四日市での新大学計画は将来の企業が求める人材のミスマッチをなくしていく期待に応えるなどと語った。
星さんは、「少子化が叫ばれているのに、大学を作っても大丈夫か」という疑問を立てて文科省の考え方を紹介し、「地域が必要とする人材が何かを地域全体で考え、それを実現するための大学であれば作っても良い」などと語り、三重大とどう連携、役割分担するかを共に考えようと結んだ。
今井さんは、作業工具、包丁、キャンプ用品などの製造業が盛んな地元と連携できる三条市立大学設置の経緯や、2021年の開学以来、高い志願倍率と定員充足率100%以上を続けている実績を紹介した。
「これまで通りでない大学の機能」に注文や期待
パネルディスカッションは、玉上晃さん(学校法人国際医療福祉大学常務執行役・事務局長、元文科省大臣官房審議官)がファシリテーターを務め、森市長、金子聡さん(三重大学理事)、西岡慶子さん(同、株式会社光機械製作所代表取締役社長)、石田明日香さん(住友電装株式会社)、西村拓也さん(株式会社東邦鋼機製作所)、秦野和也さん(キオクシア株式会社)、溝口怜果さん(海星高校3年)、伊藤成音さん(同2年)、石井亜侑さん(鈴鹿工業高等専門学校4年)、船越咲希さん(同)、山路和良さん(四日市市自治会連合会長)のみなさんがパネリストとして登壇した。
西岡さんは、日本の製品の評価を支えてきた技能の次世代への継承が人口減少などで難しくなっており、大学の果たすべき役割がここにあり、従来通りの大学ではない、実際の企業の中でリアルな課題と取り組む学びこそが不可欠だと述べた。
秦野さんは、自らの専門性を軸に持ちつつ、専門にとらわれない広い視野をもつことが研究者には重要で、四日市にはさまざまな経験の機会があり、学生は見識を深めてほしいと話した。
四日市で学ぶこと、四日市で働くこと
溝口さんは、理系とは異なる進路だが、教員の道を進みたいとの目標を語り、大学には世界的な視野で学べる環境を求め、卒業後は故郷に戻ってきて教えたいと話した。
伊藤さんは父親がものづくりに携わり、自身も工学を学びたいと考えていること、できれば地元の国公立大学で学び、地元で働きたいと将来を語った。大学では地域の企業でどんな仕事ができるのか、また、異文化を学べることなども重視したいとの考えを話した。
山路さんは、三条市の試みが参考になったとし、四日市の新大学で学んだ優秀な人材が地域に残って力を発揮してほしいこと、JR四日市駅周辺は高齢化が進み、空き地が広がっているため、大学設置をきっかけに若者が活気をもたらしてほしいこと、などを話した。









