【青春開花】55分の練習で2時間ステージへ北星高校バンド部が「つながる音」を生む理由

バンド部員の集合写真前列4人がピースサインをし、後列は楽器やマイクを手にしている
【和気あいあいとした雰囲気の北星高校バンド部】

 桜の名所・十四川が流れる三重県四日市市富田地区で、県立北星高校(同市茂福)バンド部の演奏は春の風物詩として知られている。地域の人々が足を止め、卒業生も駆けつける桜まつりのステージには、世代や立場を越えて人をつなぐ力がある。わずか55分の休み時間での練習から育つ“北星の音”を追った。

 桜まつりで、同部は2時間のステージで会場を盛り上げる。10年以上前から続いており、同高と富田地区とのつながりも深い。自治会との合同避難訓練では、地域の高齢者を生徒がリヤカーに乗せて高台まで連れて行くこともあるという。

 卒業生も大勢駆けつけ、在校生と一緒に演奏する。卒業生の中には、「秘密のケンミンショー」のエンディング曲を担当したバンドのメンバーもいるそうだ。

 部のテーマ曲はMONGOL800「小さな恋の歌」。初心者でも演奏しやすく、代々受け継がれてきた。おかげで面識のなかった卒業生と在校生がセッションでき、演奏を聴く地域の人ともつながる大切な一曲になっている。

 

桜まつりで演奏するバンド部の部員と富田地区のキャラクターの「くうちゃん」それを見る聴衆
桜まつりでライブをする部員=バンド部提供

練習時間は1日わずか55分

 同校は定時制で、現在の部員は1年生9人、2年生2人、3年生5人、4年生5人。ほとんどが高校で初めて楽器に触れた初心者だ。

 午前部・午後部・夜間部の3部制のため、部活動は4限目と5限目の間の休み時間の55分間と、月曜日の昼休みの30分間のみ。教室移動やチューニングを入れると長くても実質40分程度しか練習できない。

 そのため、初心者であっても、先輩が付きっ切りで教える余裕はない。顧問の竹森悦子教諭は「ひとりで音楽にどれだけ向き合えるかが大切。練習は孤独ではあるけれど、だからこそ音を合わせるときに震えるような感動の共鳴があり、メンバー同士がつながれる」と話す。竹森教諭や他の教員も舞台で演奏することもあるそうで、生徒と教員の枠を超えて一緒に一つの音楽を作り出している。

練習する部員
練習に励む部員


 生徒会などほかの用事で練習に参加できない部員もいる。その日のメンバーで、どの曲なら練習できるかを考えるのは部長と副部長。その間に他の部員は楽器の準備をする。ライブ前など本番が近いときは、1分でも無駄にできない。タイムパフォーマンスを追求し、音楽スキルを高めている。

ドラムとキーボードとギターとベースとボーカルの練習の様子
合奏練習の様子

「つまづいても、必ず完成できると信じる」

 部長の屋地絨之さん(4年)はボーカル兼ギターで、ライブではMCも務める。中学時代は合唱部で、ギターは高校に入ってから始めた。短い練習時間では上達が難しく、動画を見て指使いを覚えたという。「弾けない箇所でつまずいても、最後は曲が完成すると信じている」と話す。

ヴォーカルを務める部長の屋地さん
ボーカル兼ギターの屋地さん



 副部長の古賀夏月さん(4年)は、兄も同部の卒業生。楽しそうに活動する姿を見て入部を決めた。ポスター制作や弦の張り替えなど、裏方でも力を発揮する。限られた時間でも、演奏でつまずく後輩の相談に乗るなど面倒見もよく、部の屋台骨を支える存在だ。「みんなで演奏し、ひとつのメロディになった瞬間が本当にうれしい」と笑顔を見せる。

 限られた時間の中で音を重ね、教員と生徒、学校と地域の枠を超え、その瞬間ごとに生まれるメロディーが、強いつながりを生み出している。

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