私立無償化で高校選びが変化 四日市商業高校の実践探究が示す“学びの価値”

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昨年のポスターを指さす今年の生徒7人
【昨年のポスターを指さす今年度の生徒】

 三重県立四日市商業高校(四日市市尾平町)は今年の後期選抜で定員割れとなった。少子化に加え、私立高校授業料の実質無償化の影響も大きい。そうした環境の中でも同校は、地域と連携した実践探究を続けてきた。地域の課題に挑み、形にしていく学びは、進学にも就職にもつながる力を育てている。

地域とつながる実践探究

 同校の探究は、地域の課題に向き合う実践型が中心だ。商店街の活性化や企業との商品開発など、地域と協働する学びを継続してきた。販売実習では取引先との交渉や仕入れ、利益計算まで生徒が担当し、校外の大人に提案する経験を通して伝える力を磨く。最初は意見を言うことが難しかった生徒も、議論や実践を重ねる中で自信をつけていく姿が見られる。

「ちゃいろがーるず」の発信活動

 探究授業「シティマネジメント」では、映像クリエイター・シャンソンさんの指導を受け、商店街の魅力発信動画を制作している。制服の色にちなむ「ちゃいろがーるず」としてSNSやポスターで発信を続け、地域との関わりを深めてきた。

浴衣で商店街のアピールをする昨年の生徒7人
浴衣で商店街のアピールをする昨年の生徒


 昨年度の動画は、「全国動画クリエイト甲子園」地域部門で全国2位を受賞。その動画を見た名古屋国税局から依頼を受け、未成年飲酒防止の啓発動画も制作した。4月21日には感謝状が贈られ、今年度の受講生が式に出席した。

感謝状を手に記念写真を撮る生徒と関係者
感謝状を手に記念写真を撮る生徒と関係者

 今年度この授業を選択した生徒は、動画出演に恥ずかしさを感じながらも、先輩たちの活動に憧れ、商店街の人に感謝される経験に価値を見出しているという。動画クリエイトをテーマにしてから初の男子メンバーとなった佐藤律綺さん(3年)は「四商の歴史に名を残したい」と語る。

探究は進学にも就職にも

 探究で重視される「課題発見・行動・振り返り」のプロセスは、総合型選抜や学校推薦型選抜で求められる力と重なる。2024年度は54%が進学しており、探究の経験は進学にも就職にも生きている。


 一方で、商業科は全国的に志願者が減少している。少子化や大学進学率の上昇に加え、会計ソフトの普及で簿記の価値が以前に比べやや薄れつつあること、私立高校授業料の実質無償化で私立普通科を選びやすくなったことなど、複数の要因が重なっている。

 四日市市内でも高校選びの基準が変化し、ICT環境が整った私立の普通科を選ぶ動きが広がっている。

“商業科だから外す”では見落とす価値

 2022年度から必修となった「総合的な探究の時間」では、全国で地域課題を扱う学びが広がっている。四日市市内でも、海星高校(追分)がかぶせ茶を使ったどら焼きを開発したり、四日市高校(富田)の野球部員がバットの反発係数を調べるなど、実践的な取り組みが増えている。一方でまとめ学習やレポート作成にとどまる学校もある。


 その中で同校は、10年以上前から地域と連携した探究を積み重ねてきた先行校だ。商業科離れが進む中でも、こうした学びは進学・就職の双方に価値を持ち、高校教育の変化を考える上で重要な事例となっている。

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