三重県菰野町で犬の整体サービス「わんちゃんす」を営む藤井巳幸さんは、飼い主の気持ちに寄り添いながら、歩行や姿勢に悩みを抱える犬の健康を支えている。その原点には、17年8か月を共に過ごした愛犬「みつる」との別れがあった。
「みつる」の闘病が活動の原点に
みつるは晩年、口腔内の上顎にできたメラノーマ(皮膚がんの一種)を患った。腫瘍が鼻腔を圧迫していたためか、苦しそうに呼吸をすることもあったが、17歳目前という高齢だったため大きな手術は難しかった。
元女子プロレスラーで、引退後は人の整体師として活動していた藤井さんは、身体の不調が生活の質に与える影響を日頃から感じていた。「犬は痛いとも苦しいとも言えない。だから少しでも楽にしてあげられる方法はないか」。そう考えてたどり着いたのが犬の整体だった。
神奈川県藤沢市の学校へ4か月通いながら、みつるの看病を続けた。授業で学んだ手技を自宅で試すと、みつるは静かに身を預けてくれたという。「施術の時間だけでも少し楽になってくれていたら」。そんな願いを込めながら技術を磨いた。
犬の整体師の認定を受けたのは、みつるが亡くなる約1か月前だった。学校へ通う間は留守番をさせる時間も増え、「今思えば、一緒にいてほしかったのかもしれない」と振り返る一方で、「みつるがいたから今の自分がある。感謝しかない」と話す。

現在は、歩き方や姿勢に違和感のある犬を中心に施術を行っている。筋肉のこわばりは歩行の乱れや痛みにつながるため、まずは問診や触診で状態を丁寧に確認。その上で、皮膚が薄く繊細な犬の体に合わせ、やさしい力で筋肉をほぐしていく。
犬は痛みや不調を隠す習性があり、初めての施術を怖がる場合もある。その場合は飼い主に抱っこしてもらうなど、安心できる体勢で少しずつ慣れてもらう。
地域で広がる活動の輪
「無理をせず、その子のペースに合わせることを大切にしている」と藤井さん。施術後には「歩き方が安定した」「体がこんなに硬かったことに気づいた」といった声が寄せられるという。地域のイベントにも積極的に参加し、体験施術を通して犬の健康維持の大切さを伝えている。

(右側写真)肩の位置が整い、肘の向きも改善し、後ろ足も自然な姿勢で歩けるようになった(いずれも藤井さん提供)
利用する犬には高齢犬も多い。別れを迎えるケースも少なくないが、「最後まで自分の足でトイレに行けたのは藤井さんのおかげ」と飼い主から感謝の言葉を受けたこともある。「つらい別れではあるが、少しでも力になれたと感じる瞬間」と語る。
自宅では3匹の老犬と暮らし、日々の触れ合いを通して小さな変化に目を配る大切さを改めて実感しているという。
「少しでも穏やかに、自分の足で歩ける時間を長くしてあげたい」。愛犬との日々を胸に、藤井さんは犬と飼い主に寄り添い続けている。
活動の様子はInstagram(@inu_seitai_wanchance/)で発信している。










