私立高校授業料の実質無償化などを背景に、今年度は三重県四日市市内の県立高校でも定員割れが広がった。そうした中、県立四日市農芸高校(同市河原田町)は、昨年度の前期選抜で一部の学科が3倍を超える倍率となるなど、志願者を集めている。その特色の一つが、地域や企業と連携し、実習を通じて専門的な知識や技術を身に付ける学びだ。
同校には畑や養鶏施設をはじめ、食品加工や調理、造園に関する専門施設が整う。こうした実践的な学習環境は一般的な高校では代替が難しく、生徒たちは「生きた学び」の中で知識と技術を磨いている。
生産者とコラボ かぶせ茶ドリンク開発
食品科学科では、四日市の特産品であるかぶせ茶を使ったサイダー「茶イダー」の開発に取り組んでいる。

かんきつ類の果汁をビーズ状に加工してサイダーに加え、四日市産の梨やシャインマスカットの果汁を泡状にした「フォーム」をトッピングする。若い世代にも親しみやすい飲み物に仕上げ、かぶせ茶の魅力を広く発信するのが狙いだ。
生徒たちは企画だけでなく、製造までを自分たちで担当する。企業や生産者と打ち合わせや交渉を重ねながら商品化を目指すことで、食品加工の知識や技術に加え、相手に考えを伝える力や課題を解決する力も養っている。

同科では、かぶせ茶を使った飲めるプリンの開発も進めており、「茶イダー」とともに四日市市水沢町の「かぶせ茶カフェ」でのメニュー化を目指す。
3年の梅沢正男さんは「実習や実験は中学校までとは違い、目的がはっきりしているので楽しい」と話す。卒業後は大学へ進学し、さらに学びを深める予定だ。
スイーツから庭づくりまで実践的に学ぶ
同校には、農業科学科、食品科学科、環境造園科、生活文化科の4学科があり、それぞれの分野で実践的な教育に力を入れている。
生活文化科では、衣食住や福祉について幅広く学ぶ。製菓衛生コースでは洋菓子作りに取り組み、10月に開かれた三重県高校生スイーツコンテストで生徒が優勝と準優勝を獲得した。週1回の実習では、2限目から6限目まで続けて作業する日もある。洋菓子店のパティシエが外部講師として指導する機会も設けている。
3年の駒田愛之介さんはパティシエを目指して学んでいる。「実習時間が長く、本格的なスイーツが作れる。パティシエから仕事内容や将来性など、役に立つ話も聞ける」と話す。
現在は、11月14日(土)に開かれる農芸祭で販売するガトーショコラやプチマドレーヌなどの焼き菓子作りに励んでいる。製菓に加え、全国高等学校家庭科技術検定の食物調理準1級にも挑戦し、調理技術や栄養に関する知識も身に付けている。

環境造園科では、国際園芸博覧会への出展を目指した庭づくりに取り組む。CADで設計図を作成し、実際の施工につなげるほか、自動灌水装置の研究も進めている。デジタル技術と造園技術を組み合わせ、設計から施工までを実践的に学ぶ。

最新技術を学ぶDXハイスクール
農業科学科では、スマート農業について学ぶ。同校は文部科学省のDXハイスクールに指定されており、GPSと農業機械を連動させた整地や、ドローン、センサーを活用した農業技術などを学習。デジタル技術を活用し、これからの農業を支える人材の育成に取り組んでいる。

専門分野の学びは、卒業後の進路にもつながる。卒業生は食品関連企業への就職や、三重大、東京農業大などへの進学のほか、地元の茶農家を継ぐケースもある。就職と進学の割合はそれぞれ約半数で、専門知識や技術を生かして社会で活躍できる人材の育成を目指している。
部活動でも東海大会や全国大会に出場する部があり、専門分野の学習に加え、学校生活のさまざまな場面で生徒が活動している。
同校では11月14日に農芸祭を開催する。一般の来場も可能で生徒が育てた野菜や卵のほか、スイーツ、みそ、ジャムなどを販売する予定。生活文化科の服飾経営コースによるファッションショーも開かれる。

地域の特産品を使った商品開発や製菓、造園、スマート農業など、同校の学びは教室の中だけにとどまらない。地域や企業と関わりながら実践を重ね、専門的な知識や技術を身に付ける。社会とのつながりを実感できる学習環境が、四日市農芸高校の特色となっている。学校公式インスタグラム(https://www.instagram.com/nogei_high_school/#)では、各科の学びの様子などを随時更新している。

















